第91話.夢の啓示と、スキルの真実
その夜、エメリアは久しぶりに、あの不思議な声の夢を見た。周囲は白く霞んでいて、何も見えない。ただ、暖かく包み込むような声だけが、頭の中に響いてくる。
「久しぶりだね、エメリア」
声の主は、優しく、しかし確固たる意志を秘めた口調で話しかけてきた。
「あなたは……私の**『改造』スキル』**をくれた人?」
エメリアは、恐る恐る尋ねた。
「そうだよ。私は、君をこの世界に導いた者。そして、君の持つ特別な力の管理者だ」
声の主は、肯定した。エメリアは、この機会を逃してはいけないと思い、素直に自分の疑問を投げかけた。
「あの……私の**『改造』スキル』**のレベルって、どうやったら確認できるんですか? そして、レベルを上げるためには、どうしたらいいんですか?」
エメリアの問いに、声の主は静かに答えた。
「君のレベルは、君の心の中、いや、君自身の意識の奥底で確認できる。ただ、それはまだ君には難しい。だから、こうしよう」
そう言うと、エメリアの視界の片隅に、まるでゲームのステータス画面のようなものが現れた。
【改造スキル:Lv. 4】 【付随スキル:分解、再構成、簡易鑑定】
エメリアは、その表示に驚きを隠せない。自分のスキルに、レベルがあったこと、そして、いくつかの付随スキルを既に持っていたことに、初めて気づいたからだ。
「これは……いったい?」
「**『改造』スキル』は、君の『ひらめき』と『知識』を糧に成長する。レベルが上がれば、より複雑で、より大きなものを『改造』**できるようになるだろう。そして、付随するスキルも増えていく。君が今持っているスキルは、この世界のあらゆる物質を、その構造から読み解き、別の形へと作り変えるための、基本的なものだ」
声の主は、一つひとつ丁寧に説明してくれた。エメリアは、自分の持つ力が、単なる『ひらめき』ではなく、確固たる法則に基づいた力であることを理解した。
「じゃあ……これから、私はどうしたらいいんでしょうか?」
エメリアは、不安な気持ちで尋ねた。この力をどう使えばいいのか、自分に何が求められているのか、知りたかったのだ。
しかし、その問いに、声の主は答えてくれなかった。
「もう、君に教えることはない。君はもう、この世界の常識を打ち破る力を持っている。だから、これからは、君が思うままに生きていけばいい」
そう言って、声の主は、最後に一つだけ、厳しく釘を刺した。
「ただし、この**『改造』スキル』**の本質だけは、決して誰にも伝えてはならない。それは、この世界の秩序を崩しかねない、あまりに危険な力だ。君が信頼する者であっても、だ」
その言葉を最後に、声は途絶え、エメリアの意識は夢の世界から現実へと引き戻された。
目覚めたエメリアの心は、不安と期待が入り混じった、複雑な感情でいっぱいだった。しかし、自分の力の意味を少しだけ理解できたことで、彼女はこれから進むべき道が、少しだけ明確になったような気がした。