第94話.交流会の準備と、リナとマリアの思い
貴族学校との交流会が、来週に迫っていた。校内は、いつも以上に賑やかな雰囲気に包まれている。
「ねえ、エメリア! 交流会に着ていく服、もう決めた?」
昼休み、リナは目をキラキラさせながらエメリアに尋ねた。
「えっと……まだ、何も考えてなかったな」
エメリアは、そう答えて苦笑いした。彼女の頭の中は、最近図書館で読んだ古い鉱物学の本の内容でいっぱいだった。
「もう! 何言ってるのよ! 交流会は、おしゃれして、色々な人と話す、大切な機会なんだから!」
リナは、エメリアの手を握ると、熱心に交流会の意義を語り始めた。
「貴族の人たちは、平民の私たちにも優しくしてくれるって言っても、やっぱりマナーとか、ちゃんとした服装とか、色々と気をつけなきゃいけないの。それに、普段は会えないような、すごい人たちと知り合えるチャンスなんだよ!」
リナの言葉に、マリアも頷いた。
「そうだよ、エメリア。それにね、リナは貴族学校の男の子に、良い人がいないか探してるんだって!」
マリアは、いたずらっぽくリナに視線を送った。
「もう、マリアったら! そんなことないわよ!」
リナは顔を赤くして反論するが、その様子はとても楽しそうだった。エメリアは、そんな二人を見て、温かい気持ちになった。
「ふふ、二人とも、交流会をすごく楽しみにしてるんだね」
「もちろんよ! エメリアも、一緒に楽しもうね!」
リナは、エメリアの肩を抱き、改めて交流会への期待を口にした。
エメリアは、友人たちの純粋な気持ちに触れ、交流会に少しだけ興味が湧いてきた。これまでは、ただの行事だと思っていたが、友人たちにとっては、大切なイベントなのだ。
放課後、エメリアはいつものように図書館へ向かおうとした。しかし、リナとマリアが、エメリアの行く手を阻んだ。
「エメリア、待って! 今日は図書館じゃないわ!」
リナは、図書館の入り口で、エメリアをぐいぐいと引っ張った。
「えっ、でも、勉強が……」
エメリアは、まだ読み終えていない本が気になった。
「今日は、私たちがエメリアの代わりに、交流会に着ていく服の相談に乗るっていう『実験』をするの。図書館は、明日でもいいでしょ!」
マリアが、いたずらっぽくそう言って微笑んだ。二人の優しい気遣いに、エメリアは感謝した。
「ありがとう、二人とも……!」
三人は、寮の部屋へと戻り、交流会に着ていく服をあれこれと話し始めた。リナは、流行のドレスの絵を描いて見せたり、マリアは、自分のお母さんから譲り受けたというレースの生地を見せたりした。
エメリアは、そんな二人との時間の中で、改めて「普通の女の子」としての幸せを感じていた。
(ロッシュ先生との実験も、図書館での勉強も大切だけど、こういう時間も、私にとっては大切な『知識』なのかもしれないな)
交流会が、どんな出会いをもたらすのか。そして、その出会いが、彼女の**『改造』スキル』**にどんな影響を与えるのか。エメリアは、友人とのおしゃべりを楽しみながら、そんな未来を想像し、少しだけ胸を躍らせていた。