第97話.アルベルトとの出会いと、新たな交流
アルベルトと話しているうちに、エメリアは時間の流れを忘れていた。彼は、植物学だけでなく、鉱物学や水質学にも深い知識と関心を持っていた。その知識は、図書館でエメリアが学んでいることと、驚くほど共通していた。
「まさか、君が『バクテリウム』を発見した一人だったなんて。僕、感動で震えてるよ!」
アルベルトは、キラキラとした瞳でエメリアを見つめた。彼の純粋な探究心は、エメリアの**『閃き』**にも通じるものがあり、彼女はすぐに彼に好感を抱いた。
「アルベルト君も、植物についてすごく詳しいんですね。私、ロッシュ先生との実験でしか植物を育てたことがないから、すごく勉強になります」
「そうか! もしよかったら、今度、僕の家の庭園を見に来ないか? 珍しい植物をたくさん育ててるんだ。それに、僕の父も植物学者なんだ。君と話が合うと思うよ」
アルベルトからの誘いに、エメリアは驚きながらも、嬉しさがこみ上げてきた。
その時、二人のもとにリナとマリアがやってきた。
「エメリア、どこにいたの! ずっと探してたんだから!」
リナは、少し不機嫌そうに言った。
「ごめんね、リナ、マリア。アルベルト君と、植物の話で盛り上がっちゃって」
エメリアは、二人にアルベルトを紹介した。
「アルベルトです。エメリアさんと、とても有意義な話ができました」
アルベルトは、貴族らしい上品な仕草で挨拶をした。リナとマリアは、アルベルトの優しげな雰囲気に、すぐに緊張を解いた。
「ふうん、アルベルト君も植物が好きなんて、意外だね!」
リナは、興味津々といった様子で尋ねた。
「そうなんだ。エメリアさんのおかげで、ますます植物学に興味が湧いてきたよ」
アルベルトは、そう言って微笑んだ。
三人は、その後もアルベルトと、学校や趣味の話で盛り上がった。アルベルトは、平民の二人の話にも真剣に耳を傾け、彼らとの会話を楽しんでいるようだった。
交流会が終わり、寮に戻ったエメリアは、ベッドに腰を下ろして、今日のできごとを思い返していた。
(アルベルト君、本当にいい人だったな。貴族の人って、みんなあんなに優しいのかな?)
エメリアは、レナード伯爵様やロッシュ先生、そして今日出会ったアルベルトを通して、この世界の貴族に対する印象が少しずつ変わってきていることを感じていた。
「ねえ、エメリア。あのアルベルト君って、貴族学校でも有名な、すごく優秀な人なんだって! すごいね、エメリア!」
リナは、興奮した様子でエメリアに話しかけてきた。
「そうなんだ! 貴族学校にも、科学に熱心な人がいるんだね」
エメリアは、アルベルトとの再会を心待ちにしながら、彼の言葉を思い出していた。
「また、お話できるのを楽しみにしているよ、エメリアさん」
アルベルトとの出会いは、彼女の学園生活に、また一つ、新しい風を吹き込むことになりそうだった。彼女の**『知識』と『閃き』**は、この新しい出会いを通して、さらに大きく成長していく予感がしていた。