第113話.魔力を吸い取る砂と、エメリアの**『改造』**
エメリアは、アルベルトの邸宅の庭園で、魔力に汚染された土を前にしていた。公爵の不正を暴き、アルベルトの家族を救うためには、この病を治す必要がある。しかし、人前で**『改造』スキル』**を直接使うわけにはいかなかった。
(どうすれば……? あの魔力を吸い取る砂があれば……)
彼女の脳裏に、先日セバスチャンの魔力を無効化した**『特別な土』**が浮かんだ。しかし、あの土は、公爵の元に持ち去られてしまった。
(待って……。あの砂は、私が改造したものだ。ならば、同じものを作ることは、不可能じゃないはず……!)
エメリアは、足元の庭園の砂をこっそり掴んだ。そして、誰にも気づかれないように、握りしめた砂に**『改造』スキル』**を発動させた。彼女の脳裏に、魔力を吸い取る構造式が鮮明に浮かび上がる。声の主が示した、あの光の啓示が、再び彼女の力を導いてくれた。
(魔力を際限なく吸い取る構造を、この砂に組み込む……!)
彼女は、ごくわずかな力で、しかし精密に、砂の分子構造を改造していった。数秒後、彼女の手の中で、普通の砂は、魔力を無効化する特殊な砂へと変貌を遂げた。
「アルベルト君、見て!」
エメリアは、あたかも自分のポケットから取り出したかのように見せかけて、その砂を掌に広げた。
「これは、以前ロッシュ先生の実験で使っていた、魔力を吸収する特別な砂なの。これを、汚染された土に混ぜてみましょう。もしかしたら、この病を浄化できるかもしれない」
エメリアは、そう説明すると、握りしめた砂を汚染された土へとまいた。すると、彼女の改造した砂は、まるで飢えた獣のように、土に蔓延る魔力を吸収し始めた。
「すごい! 灰色だった土が、少しずつ元の色に戻っていく……!」
アルベルトが、驚きの声を上げた。彼が目にしたのは、科学でも魔法でもない、エメリアの**『改造』スキル』**がもたらした奇跡だった。
エメリアは、安堵の息をつきながらも、心の中で決意を新たにした。公爵の陰謀に立ち向かうためには、もはや、自分の持つ力を隠すだけではいられない。彼女は、自らの能力を、大切な人々を守るために使うことを決意したのだ。