第114話.魔力浄化の成功と、アルベルトの信頼
エメリアがまいた**『改造』**された砂は、まるで汚染された土に染み込むように広がり、庭園の病を浄化していった。灰色にくすんでいた草花は、徐々に生命力を取り戻し、鮮やかな緑色に変わっていく。萎れていた葉は生き生きと上を向き、黒ずんでいた土からは、再び豊かな香りが漂い始めた。
「すごい……! 本当に病が治っていく!」
アルベルトは、信じられないものを見るように、その光景をただ見つめていた。彼の顔には、希望と驚きが入り混じった表情が浮かんでいる。
「エメリアさん……。君は、一体どうやってこんなものを……」
彼は、エメリアがロッシュ先生の実験で使っていると言った**『特別な砂』**の正体が、ただの砂ではないことを悟っていた。
エメリアは、少し躊躇したが、アルベルトの真剣な眼差しに、自分の秘密の一部を打ち明けることにした。
「これは、私の**『閃き』**と、ロッシュ先生から学んだ化学の知識を使って、ごくわずかに改良した砂なの。でも、人には絶対に話せない、特別な力なの……」
「特別な力……」
アルベルトは、エメリアの言葉を噛みしめるように繰り返した。彼は、エメリアの持つ力が、ただの**『閃き』**や知識だけではないことを感じ取っていた。それは、この世界の常識を覆す、何か異質な力。しかし、その力は、今、目の前で、彼の家族を救ってくれた。
「僕が、君の秘密を誰にも話すことはない。約束する」
アルベルトは、エメリアの手をそっと握り、力強く言った。彼の瞳には、友情と、彼女の能力に対する深い敬意が宿っていた。
魔力汚染の浄化作業は、その日のうちに完了した。庭園は、元の美しい姿を取り戻し、アルベルトの父親も、魔力の汚染から完全に回復した。
「エメリア嬢……。君には、感謝してもしきれない。公爵の陰謀から、私の家族を救ってくれた」
アルベルトの父親は、深く頭を下げた。彼の顔には、安堵と、エメリアに対する計り知れない信頼の念が浮かんでいた。
エメリアは、公爵の陰謀に直接立ち向かったことで、大きな危険を冒した。しかし、それと引き換えに、アルベルトという、かけがえのない味方を得ることができた。彼の父親もまた、エメリアの協力者となり、公爵に立ち向かうための大きな力となるだろう。
エメリアの孤独な戦いは、ここから、彼女を信じ、支えてくれる仲間たちと共に、新たな段階へと進んでいく。