第118話.研究再開への兆しと、エメリアの新たな決意
アルカディアス公爵の失脚という激動の出来事から数週間後、王都は少しずつ平穏を取り戻し始めていた。公爵の不正を暴いた英雄として、アードレ公爵とレナード伯爵の名は広く知られるようになった。
公爵の監視が解かれたことで、ロッシュ先生とベイルは、ようやく本格的に**『バクテリウム』の研究を再開できることになった。彼らは、王都の行政の責任者であるレナード伯爵**と密に連携を取りながら、今後の計画を練り直していた。
ロッシュ先生から手紙を受け取ったエメリアは、その内容を読みながら、安堵と、そして新たな決意を胸に抱いていた。
「エメリアさん、君の**『閃き』のおかげで、私たちは公爵の監視から解放された。これからは、誰にも邪魔されることなく、『バクテリウム』**の研究に専念できる。君の力を、思う存分発揮してくれ!」
手紙には、ロッシュ先生の喜びと、エメリアに対する深い信頼が溢れていた。
しかし、エメリアは、ただ研究の再開を喜ぶだけではいられなかった。公爵との戦いを通じて、彼女は自分の能力が、ただ研究を助けるだけでなく、人々の命を救う力にもなることを知ったのだ。
その夜、エメリアは、アルベルトの邸宅で**『魔法の病』を浄化した際に使った『特別な砂』**の残りを、じっと見つめていた。公爵の目を欺くために、ロッシュ先生の研究で使っていると偽ったはずの力が、今や彼女自身の使命感へと変わっていた。
(この力は、もっと多くの人を救うために使えるかもしれない……)
エメリアの脳裏に、王都の衛生問題を解決する**『バクテリウム』、そして、『魔法の病』のような魔力による災害から人々を守るための、新たな『閃き』**が浮かび上がった。
彼女は、これまでの研究が、公爵の陰謀という受動的なものだったのに対し、これからは自らの意志で、人々のために能動的に力を振るうことを心に誓った。
アルカディアス公爵の失脚は、エメリアたちにとっての勝利であり、一つの章の終わりだった。しかし、それは同時に、エメリアが自らの能力と向き合い、新たな目標に向かって歩み出す、物語の新たな始まりでもあった。