第126話.『魔法改造』の応用と、ロッシュ先生への手紙

『魔法改造』のスキルを得てから、エメリアは魔法の実験に夢中になっていた。基本的な魔法の呪文を『改造』し、その効果や性質がどのように変化するかを、ノートに記録する日々。彼女は、魔法という神秘的な現象を、まるで科学の実験かのように、論理的に解明しようとしていた。

(**『着火(イグニス)』**は、マナの流れを制御して熱を生み出す魔法。ならば、マナの流れを逆にすれば、熱を吸収する魔法も作れるはず……!)

エメリアは、そう**『閃き』『着火』の呪文を逆向きに『改造』**した。それは、前世の科学でいうところの、熱力学の第二法則を応用するような感覚だった。

「クィエトゥス……!」

彼女が心の中でそう唱えると、指先から青白い光が放たれ、部屋の空気が一瞬で冷え込んだ。それは、物質から熱を奪う、新しい魔法だった。

「すごい……! 成功だわ! これで、熱に弱い物質を扱う**『バクテリウム』**の研究も、もっと進められる!」

エメリアは、自分の**『閃き』『魔法改造』の力が、『バクテリウム』**の研究に、新たな可能性をもたらすことを確信した。

その夜、エメリアは、ロッシュ先生への手紙を書いた。手紙には、**『魔法改造』のスキルについては伏せ、魔法の授業で得た『閃き』**として、熱を吸収する魔法のアイデアと、その呪文の構造式を記した。

「先生。魔法の授業で、熱を吸収する魔法の**『閃き』を得ました。この魔法を使えば、『バクテリウム』**が熱で死滅するのを防ぐことができるかもしれません」

手紙を書き終えたエメリアは、少しばかりの罪悪感を覚えた。**『改造』スキル』**の秘密を隠したまま、ロッシュ先生たちに協力することに、心苦しさを感じていたのだ。しかし、公爵との一件以来、彼女は自分の力が、再び権力者の標的になることを恐れていた。

(ごめんなさい、先生。でも、この力は、秘密にしておかなければ……)

エメリアは、手紙を封筒に入れ、翌朝、ロッシュ先生の研究室へと送った。彼女の**『魔法改造』**という力は、彼女の秘密であると同時に、研究を飛躍的に進める、大きな希望の光でもあった。