第127話.魔法陣の解析と、ロッシュ先生の驚愕
エメリアからの手紙を受け取ったロッシュ先生は、すぐにその内容に目を通した。そこには、熱を吸収する魔法の**『閃き』**と、その呪文の構造式が丁寧に記されていた。
「熱を吸収する魔法……? そんな魔法は、聞いたことがないぞ……」
ロッシュ先生は、首を傾げた。彼は、魔法の専門家ではないが、長年科学者として、魔法の文献にも目を通してきた。しかし、熱を奪う魔法は、この世界の魔法の常識にはなかった。
「ベイル! この魔法陣を、すぐに実験してみよう!」
ロッシュ先生は、興奮した様子でベイルに声をかけた。
二人は、研究室の中心に、エメリアが記した呪文の構造式を魔法陣として描き出した。そして、ロッシュ先生が、その魔法陣に魔力を流し込んだ。
「クィエトゥス……!」
彼が呪文を唱えると、魔法陣が青白い光を放ち、部屋中が一瞬で冷え込んだ。室内にあった水差しの中の水は、表面が凍りつき、冷気が彼らの吐く息を白くした。
「これは……! 信じられない……!」
ロッシュ先生は、驚愕のあまり、言葉を失った。彼の知る魔法は、熱を生み出すことはできても、熱を奪うことはできなかった。それは、魔法の根源的な性質に反すると考えられていたからだ。
「先生……! これは、もしかして、あのアルカディアス公爵の**『魔法の病』**を浄化した、あの砂と同じ原理ではないでしょうか?」
ベイルが、震える声で言った。
ロッシュ先生は、ハッとした。エメリアが作り出した**『特別な砂』は、魔力というエネルギーを無効化することで、『魔法の病』**を浄化した。そして、この魔法陣は、熱というエネルギーを吸収する。二つの現象は、全く異なるように見えて、その根底には、エネルギーを制御するという共通の原理が隠されている。
「そうだ……! エメリアさんの**『閃き』は、この世界の魔法の常識を、根本から覆すものだ! これを応用すれば、『バクテリウム』**が熱で死滅するのを防ぐことができる! いや、それどころか、魔法と科学を融合させ、この世界のあり方そのものを変えられるかもしれない……!」
ロッシュ先生の瞳は、新たな研究への情熱に燃えていた。エメリアの**『閃き』**は、彼らの研究に、そしてこの世界の未来に、新たな可能性の光を灯したのだ。