第140話.魔法の暴走と、新たな課題
エメリアが魔法の授業で見せた**『閃き』**によって、クラスの生徒たちの魔法は飛躍的に向上した。しかし、その力はまだ制御が不完全だった。
ある日の魔法の授業で、事件は起こった。一人の生徒が、エメリアから教わった**『火球(ファイアボール)』のコツを試していた。彼の放った『火球』**は、以前よりもはるかに強力なものになっていた。しかし、その魔法は制御を失い、標的を外れて、教室の壁に激突してしまった。
ドォォォン!!
爆音と共に、壁の一部が大きく崩れ落ちた。教室は煙に包まれ、生徒たちは驚きと恐怖で、悲鳴を上げた。幸いにも怪我人はいなかったが、一歩間違えば、大惨事になっていたかもしれない。
「落ち着きなさい! みんな、避難だ!」
教師は、冷静に指示を出し、生徒たちを教室の外へと避難させた。
エメリアは、自分の**『閃き』**が引き起こした事態に、心を痛めていた。彼女は、魔法の仕組みを論理的に理解していたが、生徒たちがその力を完璧に制御できるわけではないことを、見落としていたのだ。
(私の**『閃き』**は、彼らの魔法を強くした。でも、その力を制御する方法までは教えていなかった……。このままでは、また同じような事故が起きてしまう)
エメリアは、自分の力に対する責任を痛感した。彼女は、ただ魔法の威力を高めるだけでなく、その力を安全に、そして確実に制御する方法を教えなければならないと決意した。
その日の放課後、エメリアはアルベルトと共に、図書館に向かった。彼女は、魔法の制御に関する文献を、片っ端から探し始めた。
「エメリアさん。君は、自分の力を、誰かのために使おうとしている。でも、その力が、誰かを傷つけることになってしまうかもしれない……」
アルベルトが、心配そうな表情でエメリアに言った。
「わかっているわ。だから、私は、もっと魔法のことを学んで、その力を完璧に制御する方法を見つけるわ。そして、みんなに教えてあげる」
エメリアの瞳には、強い決意が宿っていた。彼女の知の探求は、新たな段階へと進んだ。それは、自分の力を、誰かを守るための力に変えるための、静かな戦いだった。