第148話.家族との再会
叙爵の儀を数日後に控えたある日、エメリアはアードレ公爵の計らいで、故郷の村に帰省した。公爵邸での暮らしや、貴族学校での日々は充実していたが、故郷の家族と会えない寂しさは、常に彼女の心の中にあった。
馬車が村に到着すると、懐かしい家が見えてきた。家の前では、父と母、そして弟と妹が、彼女の帰りを待っていた。
「エメリア!」
弟と妹が、一目散に彼女のもとへ駆け寄ってきた。エメリアは、二人をしっかりと抱きしめた。
「お姉ちゃん、大きくなったね!」
「久しぶりね、二人とも!」
4年という歳月は、エメリアだけでなく、家族をも大きく変えていた。父は少し白髪が増え、母は以前よりも穏やかな表情になっていた。弟と妹は、背が伸び、すっかり成長していた。
「エメリア、よく帰ってきた」
父が、優しくエメリアの頭を撫でた。
「お父さん、お母さん、ただいま」
エメリアは、故郷の温かさに、胸がいっぱいになった。
夜、家族全員で食卓を囲んだ。エメリアは、貴族学校でのことや、ロッシュ先生との研究のこと、そして、アルベルトやエラといった友人たちのことを、楽しそうに話した。
「すごいね、エメリア。お前は本当に遠いところへ行ってしまったと思っていたが、私たちの娘であることに変わりはないな」
父が、しみじみと言った。
「そうよ、お父さん。私は、貴族になっても、みんなの娘で、姉よ。それに、叙爵されたら、この領地の領主になるの。だから、これからも、ずっとみんなと一緒よ」
エメリアは、そう言って微笑んだ。彼女の言葉に、家族は心から安堵し、喜んだ。
「そうか……。領主になるのか。すごいな、エメリア」
父は、誇らしげにエメリアを見つめた。
家族との再会は、エメリアにとって、叙爵の儀を迎える上で、何よりも大切な時間だった。彼女は、故郷の家族の温かさを胸に、領主として、この村と、そしてこの国を守っていくことを、改めて心に誓った。