第149話.叙爵の儀
王宮の大広間は、厳かな空気に満ちていた。国王アルフレッド、アードレ公爵、そしてレナード伯爵をはじめ、多くの貴族たちがエメリアの叙爵の儀を見守るために集まっていた。壇上に上がったエメリアは、真新しい貴族の礼服に身を包み、少し緊張した面持ちで国王の前に跪いた。
「エメリア・アードレ。顔を上げなさい」
国王アルフレッドの厳かで温かい声が、大広間に響き渡る。エメリアは顔を上げ、国王の瞳をまっすぐに見つめた。
「貴殿の、国に対する多大なる貢献を讃え、ここに子爵の爵位を授ける」
国王の言葉に、大広間は静まり返った。国王は、腰に佩いていた儀礼用の剣を抜き、エメリアの肩にそっと触れた。
「貴殿は、アルカディアス公爵の不正を暴き、国を魔力災害の危機から救った。また、**『バクテリウム』**活性化と魔力吸収の魔法陣の基礎を築き、若き魔道士たちの才能を開花させた。その功績は、我々が知る以上に、この国を救ってくれた」
国王は、剣をエメリアの反対側の肩に触れさせ、再び静かに言葉を続けた。
「そして、貴殿が生まれたエルヴァンス領を、貴殿に与える。その地を、貴殿の力で、より豊かな地へと導きなさい」
国王は、剣を鞘に収め、エメリアに手を差し伸べた。
「立て、エメリア・エルヴァンス子爵」
エメリアは、国王の差し出した手を握り、立ち上がった。その瞬間、大広間に集まっていた貴族たちから、盛大な拍手が巻き起こった。その拍手は、エメリアの功績を認め、彼女の新たな旅立ちを祝福するものだった。
アードレ公爵は、壇上のエメリアを誇らしげに見つめていた。彼の隣にいたアルベルトも、エメリアの晴れ姿に、心からの拍手を送っていた。
エメリアは、国王と貴族たちに深々と頭を下げた。彼女は、この叙爵は、自分だけの力で成し遂げたものではないことを知っていた。家族、ロッシュ先生、アルベルト、そしてアードレ公爵……。多くの人々の支えがあったからこそ、この場所に立つことができたのだ。
「ありがとうございます、陛下。そして、皆さま……。皆さまのご期待に沿えるよう、これからも、この国の未来のために、全力を尽くします」
エメリアの瞳は、決意に満ち溢れていた。彼女の叙爵は、王都中で大きな話題となり、その日は、新たな時代の始まりを告げる日となった。