第153話.街づくり、始動
エメリアの故郷の村は、活気に満ちていた。子爵として新たな領主となったエメリアの元に、鍛冶屋ダクレスが集めてきた腕のいい職人たちが集結していた。彼らの表情には、新しい街づくりに参加できることへの期待と誇りが満ち溢れている。
「エメリア様!俺たち職人の準備は万端ですぜ!いつからでも始められます!」
ダクレスが、興奮した様子でエメリアに報告した。
エメリアは、ガイウス、ゼノスと共に、村の少し離れた場所に広がる開拓予定地に来ていた。そこには、新しい街の基礎となる給水施設が建設される予定だ。
「皆さん、ありがとう。この街は、皆さんの力なしにはつくれません。さあ、始めましょう!」
エメリアの号令で、街づくりが始まった。
しかし、最初の難関は、大量の資材を運搬することだった。新しい街の建設には、大量の石材と木材が必要だ。木材は、川の上流にある森から伐採できるが、それを村まで運ぶのが大変だった。
「エメリア子爵様。資材の運搬に、予想以上の人手と時間がかかりそうです。馬車も数が足りませんし……」
ガイウスが、困った表情で報告した。
その時、エメリアは**『閃き』**を感じた。彼女は、前世の知識を応用し、川の流れを使って木材を運搬する方法を考えた。
「川の上流から木材を流して運搬しましょう!そして、村に到着した木材を、効率的に陸揚げするための道具を作りましょう!」
エメリアは、そう言って、滑車とロープを使った**『クレーン』**のような道具の設計図を書き始めた。それは、川岸に立てた支柱と、滑車を組み合わせ、重い木材を少ない力で引き上げることができる、前世の物理学を応用したものだった。
「これは……!滑車を複数組み合わせることで、こんなにも小さな力で重いものを持ち上げられるとは……!」
ダクレスは、その画期的な道具に目を輝かせた。彼の卓越した鍛冶技術と、エメリアの**『閃き』が融合し、『クレーン』**はあっという間に完成した。
そして、街を頑丈にするため、エメリアは、建てた建物に魔法陣を施すことを提案した。
「建物の壁や基礎に、耐震性と耐久性を高めるための魔法陣を刻み込みます。そうすれば、この街は、どんな災害にも負けない、頑丈な街になります」
エメリアの言葉に、ゼノスは深く感銘を受けた。
「素晴らしい……! 建築と魔法を融合させるなんて、誰も考えもしなかった。この街は、間違いなく、この国のどこよりも素晴らしい街になります!」
エメリアの**『閃き』**は、街づくりの新たな可能性を切り開いた。彼女の力は、故郷の村を、より安全で、豊かな街へと変えるための、希望の光となっていった。