第160話.王都の危機と、青の騎士団
エメリアの街が順調に発展を遂げていたある日の午後、王都から緊急の連絡が舞い込んできた。伝令の騎士は、馬を乗り潰す勢いで駆けつけ、疲労困憊の表情で一枚の書状を差し出した。
「エメリア子爵様、王都が……王都が危機に瀕しています!」
ガイウスが受け取った書状を、エメリアは真剣な眼差しで読み進めた。そこには、王都の地下水路で発生した原因不明の魔力災害と、その影響で発生した魔物たちの暴走が記されていた。王都の騎士団だけでは対処しきれず、各領地の協力を要請する内容だった。
「魔力災害……。まさか、アルカディアス公爵の残党が……」
エメリアは、以前の事件を思い出し、胸騒ぎを覚えた。
「エメリア子爵様、この街の防衛は私にお任せください。ですが、王都へ向かうとなると、子爵様は……」
ガイウスが、心配そうにエメリアを見つめた。エメリアは、この街の領主として留まるべきか、それとも自身の力で王都の危機を救うべきか、一瞬考えた。
「ガイウスさん、留守はあなたに任せます。この街のことは、あなたが一番よくわかっている。みんなのことを、お願いします」
エメリアは、ガイウスを信頼し、迷うことなく王都へ向かう決意を固めた。
「承知いたしました!命に変えても、この街をお守りいたします!」
ガイウスは、力強く頭を下げた。
王都へ向かう準備をしながら、エメリアは一つの疑問を抱いていた。王都の地下水路には、ロッシュ先生がベイルと共に研究を続けているはずだ。彼らがいるのに、なぜ魔力災害が制御できないのか。
「ガイウスさん、ロッシュ先生は王都にいるはずです。なぜ、先生が魔力災害を制御できないのでしょうか?」
エメリアの問いに、ガイウスは神妙な面持ちで答えた。
「それが……書状には、先生が実験中に何者かの妨害を受け、魔法陣が暴走したと書かれていました。先生ご自身も負傷され、思うように動けない状況のようです」
エメリアは、その言葉に胸が締め付けられる思いだった。ロッシュ先生が無事だと信じながらも、いてもたってもいられない気持ちが、彼女を駆り立てた。
エメリアは、ディランが率いる騎士団、通称**『青の騎士団』を招集した。彼らは、エメリアがミーア鉱**の代わりに木材と魔法陣を使って作り上げた、青く輝く武器と鎧を身につけていた。その武具は、通常の鉄よりもはるかに硬く、軽量で、魔法の効果を増幅させる特性を持っていた。
「ディランさん、王都へ向かいましょう」
「はい、子爵様!いつでも出撃できます!」
ディランは、力強い眼差しで応えた。彼の騎士団は、エメリアが考案した**『制御魔法陣』**によって、魔法の訓練も積んでおり、その実力は王都の騎士団にも引けを取らない。
王都へ向かう道中、エメリアは**『青の騎士団』**と共に馬を走らせた。彼女は、ただの領主として指示を出すだけでなく、騎士たち一人ひとりに声をかけ、コミュニケーションをとることを心がけた。
「あなたたちの武器は、とても素晴らしいわ。その武器は、私たちの街を守ってくれる、希望の象徴よ」
エメリアの言葉に、騎士たちは顔を輝かせた。彼らは、自分たちが持つ武具が、単なる武器ではなく、この街の未来を背負う、誇り高いものであることを知った。
「子爵様!俺たちは、この街の誇りを胸に、王都の危機を救ってきます!」
「ええ。この青い光を、王都の闇を照らす光に変えましょう!」
エメリアは、騎士たちと共に、王都へと向かった。彼女の胸には、故郷の街と、そしてロッシュ先生を救い、王都の平和を守るという、強い決意が宿っていた。