第161話.王都の惨状と、ロッシュ先生との再会

エメリア率いる**『青の騎士団』**は、馬を飛ばし、ついに王都に到着した。しかし、彼女の目に飛び込んできたのは、かつての華やかさを失い、無残な姿に変わり果てた王都の街並みだった。街の中心部から立ち上る黒い煙、崩れた建物、そして街をさまよう魔物たちの姿。人々の顔には、恐怖と絶望の色が濃く浮かんでいた。

「ひどい……。こんなに、ひどいことになっていたなんて……」

エメリアは、その惨状に息をのんだ。彼女が知る王都とは、あまりにもかけ離れた光景だった。

ディランは、冷静に周囲の状況を把握した。

「子爵様。王都の人々の避難は、我々**『青の騎士団』に任せてください。子爵様は、一刻も早くロッシュ先生**の元へ!」

「ええ、ありがとう、ディランさん。みんな、無理はしないで!」

エメリアは、ディランに後を託し、王宮の研究所へと急いだ。

研究所の扉を開けると、そこにはベイルが、ベッドに横たわるロッシュ先生のそばに控えている姿があった。ロッシュ先生の顔は青ざめていたが、包帯が巻かれた腕からは、かろうじて血が止まっているようだった。

「先生!大丈夫ですか!?」

エメリアは駆け寄り、ロッシュ先生の傷を**『簡易回復』**の魔法で癒した。応急処置は施されていたものの、完治には程遠い状態だった。

「エメリア……。よく来てくれた……」

ロッシュ先生は、痛みに耐えながらも、安堵の表情を見せた。

「一体、何があったんですか!?なぜ、魔法陣が暴走したんですか!?」

エメリアの問いに、ベイルが答えた。

「エメリア様……。私たちが地下水路に新しい魔法陣を設置していた時、何者かに襲われたんです。その時に、魔法陣を暴走させられてしまって……」

「その者の目的は、バクテリウムの研究を妨害することにあった……。そして、魔法陣を暴走させ、王都に混乱をもたらすことだ」

ロッシュ先生は、痛みに耐えながら、そう言った。

「魔力災害の原因は、地下水路にある、暴走した**『バクテリウム』**活性化魔法陣です。このままでは、王都の魔力は、すべて吸い取られてしまう……」

ロッシュ先生の言葉に、エメリアは自身のスキル**『詳細解析(アナライズ)』**を使って、地下水路の魔力状況を解析した。すると、暴走した魔法陣から、凄まじい勢いで魔力が放出され、それが街全体に広がり、魔物たちを凶暴化させていることがわかった。

「先生、解決策はあります!私が、暴走した魔法陣を抑える魔法陣を作って、魔力を制御します!」

エメリアは、そう言って立ち上がった。彼女の瞳には、かつての不安な表情はなく、故郷の街と、そしてロッシュ先生の笑顔を守るという、強い決意が宿っていた。

「エメリア……。君の**『閃き』**を、この国の未来のために使ってくれ……!」

ロッシュ先生は、エメリアに最後の希望を託した。エメリアは、地下水路へと向かうため、研究所を後にした。彼女の背後から、ベイルの声が聞こえてきた。

「エメリア様!お気をつけて!」

王都の運命は、今、彼女の双肩にかかっていた。