第182話.勝利の凱旋と、伯爵への昇爵
クルダン帝国軍との戦いの噂は、瞬く間に王国中を駆け巡った。一地方都市が、圧倒的な国力を誇る帝国の精鋭部隊を、一人も犠牲者を出すことなく撃退したという事実は、人々の間で驚きと畏怖をもって語られた。
そんな中、エメリアの元に、国王アルフレッドからの書状が届いた。それは、王都への召喚を命じるものだった。
「子爵様、国王陛下からのお呼びです。王都の貴族たちは、今回の件で、子爵様の功績を認めざるを得ないでしょう」
ガイウスは、そう言って、エメリアに書状を手渡した。
「ええ。でも、貴族派は、きっと面白くないでしょうね」
エメリアは、そう言って、静かに微笑んだ。彼女は、バルドの件以来、貴族派が彼女の力を危険視していることを知っていた。
王都へと向かう馬車の中、エメリアはディランに尋ねた。
「ディランさん、バルドの件は、どうなりましたか?」
「捕らえたスパイたちの自白と、バルドの供述から、今回の魔力災害が貴族派の陰謀だったことは明白です。しかし、貴族派の首謀者たちは、すでに国外へ逃亡したようです。バルドは、記憶が曖昧なため、首謀者の正体を知ることはできませんでした」
ディランは、そう言って、悔しそうな表情を浮かべた。
「そう……。やはり、一筋縄ではいきませんね」
エメリアは、そう言って、窓の外に広がる景色を眺めた。
王都に到着したエメリアは、国王アルフレッドの元へ謁見した。
「エメリア子爵。このたびは、国の危機を救ってくれて、心から感謝する」
国王アルフレッドは、エメリアの功績を称え、深々と頭を下げた。
「もったいないお言葉です、陛下。私は、ただ、私の街と、そこに住む人々を守りたかっただけです」
「そうか……。だが、君の功績は、それだけではない。君は、クルダン帝国との戦争を、未然に防いでくれた。これにより、多くの人々の命が救われたのだ」
国王アルフレッドは、そう言って、エメリアの功績を称えるため、彼女に伯爵の爵位を授けることを宣言した。
「エメリア・フォン・グランツ。君の功績を称え、ここに伯爵の爵位を授ける!今後は、グランツ伯爵として、王国の未来を支えてくれ!」
国王の言葉に、貴族たちは驚きの声を上げた。しかし、エメリアの功績は、誰もが認めざるを得ないものだった。
「ありがとうございます、陛下。この名に恥じぬよう、尽力いたします」
エメリアは、そう言って、国王に深々と頭を下げた。
伯爵となったエメリアは、王都の貴族社会から、新たな脅威と見なされることになった。彼女の**『閃き』**と、その力が生み出す革新は、古い常識にとらわれた貴族たちにとって、あまりにも眩しすぎる存在だったのだ。
エメリアの戦いは、爵位の昇格によって、さらに複雑なものへと変化していく。