第183話.帝国の激震と、新たな将軍の台頭
エメリアの都市との戦いから帰還したクルダン帝国軍は、敗北の責任をめぐって激しい議論に包まれていた。将軍ザインは、一地方都市に大敗を喫した責任を問われ、失脚は免れない状況だった。
「ザイン将軍の失態は、帝国の歴史に汚点を残すものだ!あのような無能な将軍は、すぐに処刑すべきだ!」
帝国の元老院では、貴族たちが口々にザインを非難した。彼らの怒りは、エメリアの都市に奪われた市場の利益と、崩壊し始めた貴族の権威に向けられていた。
「しかし、あの都市の防衛は、我々の想像を遥かに超えていた。魔法が効かず、さらに吸収した魔法を放ってくるなど、前代未聞だ!」
ザインは、自らの潔白を主張したが、彼の言葉に耳を傾ける者はいなかった。
そんな中、一人の若き将軍が、静かに口を開いた。彼の名はルディウス。若くして数々の戦功を立て、帝国の若き英雄として知られていた。
「将軍の失態は、確かに許されるものではありません。しかし、私は、今回の敗北は、ザイン将軍個人の責任ではないと考えます」
ルディウスの言葉に、元老院は静まり返った。
「では、一体誰の責任だと申すのか、ルディウス将軍!」
「我々、帝国全体の責任です。我々は、エメリア子爵の都市の力を過小評価し、傲慢な心で戦いを挑んでしまいました。彼女の都市は、もはや小さな街ではありません。新たな技術と、未知の魔法を持つ、強大な要塞です」
ルディウスの言葉に、貴族たちは反論できなかった。彼らもまた、今回の敗北が、ただの偶然ではないことを感じ取っていたのだ。
「では、貴様は、どうすべきだと考えるのだ?」
「まずは、エメリア子爵の都市の情報を、徹底的に調べるべきです。そして、我々の戦い方を、根本から見直さなければなりません。彼女の都市は、武力だけでは攻略できません」
ルディウスは、そう言って、一枚の地図を広げた。そこには、エメリアの都市と、その周辺の地形が、詳細に描かれていた。
「私が、次期総司令官として、エメリア子爵の都市を攻略してみせます。武力ではなく、知恵と、新たな戦略で、あの要塞を陥落させます」
ルディウスの言葉に、元老院の貴族たちは、彼の才能と手腕に期待を寄せた。
「しかし、貴様は、あの都市の攻略方法を知っているのか?」
「はい。私は、あの都市を攻略する、唯一の方法を知っています。武力は、あくまで最後の手段。彼女の都市を攻略するには、彼女の持つ技術と、それに依存する市民たちの心を、揺さぶる必要があります」
ルディウスは、そう言って、不敵な笑みを浮かべた。彼の瞳には、エメリアの都市を攻略するという、強い意志が宿っていた。
クルダン帝国は、ザイン将軍の失脚と、新たな将軍ルディウスの台頭により、エメリアの都市への新たな戦略を練り始めていた。エメリアの戦いは、武力と武力ではない、知恵と知恵の戦いへと、その様相を変化させていく。