芹沢鴨の異世界日記 第二十話


絶壁山脈へと向かう道は、険しい道のりだった。王都の平穏な道とは違い、獣道のような細い道が続き、足元は常に不安定だった。周囲には、見たこともない巨大な木々が生い茂り、不気味な鳴き声が森の奥から聞こえてくる。

「くそっ、本当にグリフォンがいるのか? まるで、化け物の巣窟じゃないか……」

アルベルトが、警戒しながらそう言った。

「ふん。当たり前だろう。強い魔物ほど、人里離れた場所に住むものだ」

俺は、そう言って、腰の剣に手をやった。

絶壁山脈に近づくにつれ、道の険しさは増していった。そして、俺たちは、ついに最初の敵と遭遇した。

「グルルルル……!」

茂みの中から、三匹のオークが現れた。オークとは、豚の顔をした、人間よりも遥かに大きい魔物だ。その手には、巨大な棍棒が握られている。

「オークか……! 芹沢、俺が引きつける! その間に、お前は……」

アルベルトが、そう言って構えを取る。だが、俺はアルベルトの言葉を遮った。

「必要ない。雑魚は、俺一人で十分だ」

俺は、そう言って、オークに向かって駆け出した。

「おい、芹沢! 待て!」

アルベルトが、焦りの声を上げる。だが、俺は止まらない。

オークの一匹が、巨大な棍棒を振りかぶって、俺に襲いかかってきた。

俺は、その一撃を、身体を捻ってかわした。そして、その隙を、俺は見逃さない。

「『剣術融合』……突き!」

俺の剣は、雷光のように、オークの心臓を貫いた。

「グオオオ……!」

オークは、絶叫を上げて、地面に崩れ落ちた。

「なっ……! 一撃で!?」

アルベルトが、驚愕の声を上げた。

だが、俺は、止まらない。

「『剣気』!」

俺は、剣気スキルを発動させ、残りの二匹のオークに狙いを定めた。

「居合……抜刀斬り!」

俺は、剣を鞘に納め、そして、一瞬で抜き放った。

光の斬撃が、残りのオークたちを、同時に切り裂いた。

「……ふん。この程度か」

俺は、そう言って、剣についた血を払った。

「……お前、本当に、人間か……?」

アルベルトが、震える声でそう言った。

俺は、アルベルトの言葉を無視し、オークの魔石を回収した。

「さあ、行くぞ。こんなところで時間を食っている暇はない」

俺は、そう言って、絶壁山脈のさらに奥へと足を踏み入れた。

絶壁山脈は、想像以上に険しい場所だった。オーク以外にも、様々な魔物が、俺たちの行く手を阻んだ。

巨大な熊のような魔物、巨大な蜘蛛のような魔物。だが、俺の剣は、どんな魔物も、一撃で仕留めた。

『剣術融合』、『剣気』、そして『居合』。

これらのスキルを組み合わせることで、俺は、どんな魔物にも対応できる、最強の剣士になっていた。

「すげえ……本当に、お前は、どんな敵でも倒せるんだな……」

アルベルトが、俺の剣の腕に、心底感心したように言った。

俺は、ただ黙って歩き続けた。

そして、俺たちは、ついに、絶壁山脈の山頂に辿り着いた。

山頂は、霧が立ち込めており、足元は、どこまでも続く断崖絶壁だ。そして、その断崖絶壁の向こう側には、雲海が広がっている。

「……グリフォンは、この雲海の上を飛んでいるらしい」

アルベルトが、そう言った。

俺は、剣を抜き、空を見上げた。

雲海の上を、何かが旋回しているのが、かすかに見えた。

「……来たな」

俺は、そう呟いた。

「行くぞ、アルベルト。グリフォンの首を、斬り落としてやる」

俺は、そう言って、雲海に向かって、一歩足を踏み出した。