芹沢鴨の異世界日記 第四十九話
俺の剣に纏わりついた水の魔力は、滝の水そのものが、俺の『スキル作成』によって、俺の剣術と融合した、新たな力だ。俺は、その剣を携え、俺たちの身体を締め付ける、水の蛇に向かって、一気に間合いを詰めた。
「『水剣』……一の太刀!」
俺は、剣を振り抜いた。
俺の剣から放たれた斬撃は、水の魔力を放ち、水の蛇を、まるで、最初からなかったかのように、切り裂いていく。水の蛇は、悲鳴を上げる間もなく、その身体を、水の粒子へと変え、消滅していった。
静寂が、再び、星の道を支配する。
俺は、荒い息を吐きながら、剣を鞘に納めた。
「……やったのか……?」
アルベルトが、信じられない、といった表情で俺を見た。
「ああ。終わった」
俺は、そう言って、力なく微笑んだ。
その時、俺たちの頭の中に、声が響いた。
《スキル『水剣』のスキルレベルが上昇しました。》 《アルベルトのスキル『ヒーリング』のスキルレベルが上昇しました。》
俺とアルベルト、二人のスキルが、再び、同時にレベルアップした。
「……すげえ! 俺のスキルまで、レベルアップしたぞ!」
アルベルトが、嬉しそうな声で叫んだ。
俺は、その言葉に、納得した。
俺が、滝の水を取り込んでスキルを作成したことで、俺のスキルがレベルアップしただけでなく、アルベルトのスキルも、レベルアップしたのだ。それは、まるで、俺たちの絆が、スキルとなって、強くなったかのようだった。
俺は、アルベルトの元に駆け寄った。
「感謝する、アルベルト。お前のおかげで、俺は、また一つ、強くなった」
俺は、そう言って、アルベルトの肩を叩いた。
アルベルトは、俺の言葉に、照れくさそうに笑った。
「はは! 俺は、何もしてないぜ!」
「馬鹿を言うな。お前の存在が、俺を、強くする」
俺は、そう言って、アルベルトをまっすぐに見つめた。
アルベルトは、俺の言葉に、満面の笑みを見せた。
俺たちは、滝の水の魔物を倒し、その魔石を手に入れた。
これで、神々の都アトランティスへ向かうための、道が、また一つ、開かれた。
俺たちは、星の道をさらに奥へと進んでいった。道は、次第に、霧に包まれていく。そして、俺たちの目の前に、巨大な霧の壁が現れた。
「……霧か。だが、なんだ、この魔力は……?」
アルベルトが、警戒しながら、霧の壁を眺めた。
霧の壁からは、これまでに感じたことのない、巨大な魔力が放たれている。それは、まるで、この霧の壁そのものが、一つの巨大な魔物であるかのような、禍々しい気配だった。
「ふん。アトランティスへ向かう、最後の試練だろう」
俺は、そう言って、伝説の剣を抜いた。
だが、その時、俺の頭の中に、声が響いた。
《警告。この霧は、この世界の全ての魔力が、凝縮されたものです。》 《この霧を、あなたの『スキル作成』で、スキルとして創造することは、極めて困難です。》 《あなたの身体に、大きな負荷がかかるでしょう。》
俺は、その警告に、思わず舌打ちをした。
「くそっ、そう簡単には、いかないか……!」
俺は、そう言って、霧の壁を睨みつけた。
俺の『スキル作成』は、どんな魔物と戦っても、その魔物の特性を、俺のスキルにすることができる。だが、この霧は、この世界の全ての魔力が、凝縮されたもの。それは、俺の想像を遥かに超える、巨大な存在だった。
俺は、アルベルトを見た。
アルベルトは、俺の顔を見て、何かを察したようだった。
「おい、芹沢。どうしたんだ?」
「ふん。どうやら、俺の『スキル作成』では、この霧を、どうにかすることはできないらしい」
俺の言葉に、アルベルトは、驚愕の表情を浮かべた。
「なっ……!? そんな馬鹿な……!」
「馬鹿ではない。これが、この世界の、理だ」
俺は、そう言って、再び霧の壁を睨みつけた。
この霧を、どうにかする力は、俺の剣にはない。
だが、俺は、この霧の壁を、突破しなければならない。
俺は、そう、心に誓った。
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