第90話.輝く粒子の正体と、ベイルへの報告
ロッシュ先生とエメリアは、物置小屋にこもり、エメリアが見つけてきた輝く粒子の実験に没頭していた。しかし、どんな実験を試しても、その粒子は全く変化を見せなかった。熱を加えても、冷やしても、酸やアルカリ性の薬品をかけても、ただ静かに輝いているだけだった。
「どうしてなんだ……? まるで、この世界の物質ではないようだ。私の知識では、この粒子の正体はまったく見当がつかない……」
ロッシュ先生は、頭を抱えて唸っていた。彼の科学者としての探究心は、この未知の存在によって、これまでにないほど強く揺さぶられていた。
そんなロッシュ先生の様子を、エメリアは心配そうに見つめていた。彼女の**『改造』スキル**は、この粒子が特別なものであることを強く示していたが、それが一体何なのか、どうすればその力を引き出せるのか、彼女にも分からなかった。
(この粒子、何だろう……? 私の**『改造』スキル』**と、何か関係があるのかな?)
エメリアは、自分の能力と粒子の関係性を探るため、頭の中で様々な可能性を巡らせていた。そして、ふと、ある**『閃き』**が頭に浮かんだ。
「あの、ロッシュ先生。この粒子を、私たちが見つけた**『特別な土』**に入れてみたらどうでしょうか?」
エメリアの言葉に、ロッシュ先生はハッと顔を上げた。これまでの実験は、すべて粒子単体で行っていた。しかし、もしこの粒子が**『バクテリウム』**と同じように、特定の環境下でしか活動しない存在だとしたら……。
「そうか! 私はまた、君の**『閃き』**に助けられたようだ! 君は本当に、私の研究にとって、最高のパートナーだ!」
ロッシュ先生は、すぐに**『特別な土』を用意し、その中に輝く粒子を混ぜてみた。すると、それまで静かに輝いていた粒子が、まるで呼吸をするかのように、さらに強く、まばゆい光を放ち始めた。そして、その光が『特別な土』の中の『バクテリウム』に届くと、『バクテリウム』**の活動が、信じられないほど活発になったのだ。
「これは……すごい! **『バクテリウム』が、まるで命を得たかのように活動している! この輝く粒子は、『バクテリウム』**を活性化させる、特別なエネルギーを持っているようだ!」
ロッシュ先生は、興奮しながら実験結果を記録した。この輝く粒子は、単なる鉱物ではなく、**『バクテリウム』**の活動を飛躍的に向上させる、触媒のような役割を果たすことが分かったのだ。
翌日、ロッシュ先生は、この驚くべき成果をベイルに報告するため、エメリアと共に薬品分析所へと向かった。
ベイルは、二人の話を聞き、輝く粒子が**『バクテリウム』**に与える影響を実際に目にした瞬間、絶句した。
「信じられない……! これほどの活性化作用を持つ物質が、この世界に存在したとは……。ロッシュ先生、エメリアさん。君たちは、またしてもこの世界の常識を覆してくれたようだ」
ベイルは、二人の功績を心から称えた。彼の科学者としての探求心は、この新たな発見によって、再び燃え上がっていた。
「ロッシュ先生。この輝く粒子と**『バクテリウム』**を組み合わせれば、水の浄化をさらに効率的に、そして安全に行うことができる。この技術を応用すれば、王都だけでなく、水質汚染に苦しむすべての村や町を救うことができるだろう」
ベイルは、この新たな発見がもたらす未来の可能性に、胸を躍らせていた。
エメリアの何気ない**『閃き』**が、またしてもこの世界の科学に、大きな進歩をもたらしたのだ。