第93話.図書館の仲間たちと、貴族との交流会

エメリアの図書館での生活は、思わぬ出会いをもたらした。彼女が毎日のように通ううちに、図書館の先生(司書)であるリリアと、すっかり仲良くなったのだ。

「先生、この本を探しているんですけど、どこにあるかわかりますか?」

エメリアは、見慣れない文字で書かれた古ぼけた羊皮紙の書物を手に、リリアに尋ねた。

「ええと、これは……。ああ、これは王都が建つよりも前に書かれた、古い鉱物学の書物ですね。とても貴重なものですが、この図書館の奥に眠っていますよ。さあ、こちらへ」

リリアは、優しく微笑むと、エメリアを誰も立ち入らないような、埃をかぶった書架へと案内してくれた。

「先生、ありがとうございます! 先生がいてくれると、探したい本がすぐに見つかって、すごく助かります!」

「いいのよ。本を愛してくれる子に読んでもらうのが、私の喜びだもの。それに、エメリアさんが来てから、この図書館も少し賑やかになった気がするわ」

リリアの言葉通り、エメリアが図書館に通うようになってから、彼女の影響を受けてか、他の生徒たちも図書館に足を運ぶようになっていた。その中には、エメリアとアルフレッドの会話に興味を持って、声をかけてくる生徒もいた。

「ねえ、エメリア。君がいつも読んでる本、すごく難しそうだけど、面白いの?」

そう話しかけてきたのは、同じクラスの生徒、セシルだった。彼は、エメリアたちがやっていた「実験」にはあまり興味がなかったが、エメリアが真剣に本を読んでいる姿を見て、関心を持ったのだという。

「うん! この本には、まだこの世界で知られていないことがたくさん載っているみたいで、すごく面白いんだよ!」

エメリアは、嬉しそうに答えた。

セシルは、エメリアが話す内容に目を丸くし、次第に彼女と一緒に本を読むようになった。アルフレッドも加わり、いつしか三人は、放課後を図書館で過ごす、新しい仲間となっていた。


そんなある日の昼休み、生徒たちの間で一つの話題で持ちきりになっていた。

「聞いた? 今年の貴族学校との交流会、もうすぐらしいよ!」

「えー、またやるんだ! 楽しみだね!」

エメリアは、友人たちの話に耳を傾けた。

「交流会って、なんですか?」

エメリアの問いに、リナが詳しく教えてくれた。

「年に4回、この学校と王都の貴族学校が合同でやる行事だよ。お茶会をしたり、ゲームをしたりするんだ。王都の貴族は、平民を差別したりしないから、みんな仲良しなんだって」

「そうそう! 昔、この国の国王が『国民があってこそ貴族がある』っていう方針を打ち出して、それが今もずっと続いているんだって。だから、貴族も平民も、みんな対等に接してくれるの」

マリアも楽しそうに付け加えた。

エメリアは、この世界の貴族のあり方に驚きつつも、交流会というイベントに少し胸を躍らせた。これまで、彼女の人生は**『改造』スキル』実験**が中心だった。しかし、友人たちとの出会いを通して、彼女はもっとこの世界のことを知りたいと思うようになっていた。

「ねえ、私たちも一緒に行こうよ、エメリア! きっと楽しいから!」

リナの誘いに、エメリアは笑顔で頷いた。

図書館での穏やかな日々から、一転して賑やかな交流会へと。エメリアの学園生活は、また新たな展開を迎えようとしていた。