第115話:公爵の不正と、王への奏上

アルベルトの邸宅の庭園を救ったエメリアの活躍は、アルベルトの父、フィリップ・アークライト卿を通じて、盟友であるレナード伯爵へとすぐに伝えられた。そして、その情報は、アードレ公爵の元にも届けられた。

「『魔法の病』……それを、ロッシュの研究に協力するあの平民の少女が持っていた砂が治しただと?」

アードレ公爵は、フィリップ・アークライト卿からの報告書を読み、驚きを隠せないでいた。彼は、セバスチャンの魔力が関わる病が、科学の力で浄化されたという事実に、大きな可能性と、アルカディアス公爵の不正を暴く決定的な証拠を見出した。

アードレ公爵は、これまでのアルカディアス公爵の不正行為に関する資料を、急いで収集させた。研究の横取り、政敵に対する魔力の悪用、そして無実の平民の才能を私物化しようとする企み。それらの証拠は、彼の悪行の全てを物語っていた。

そして、アードレ公爵は、これらの証拠を携え、王宮へと向かった。

【国王】
アルフレッド・ゼファリアス・ファルティナ

国王アルフレッド・ゼファリアス・ファルティナの前に立つアードレ公爵は、厳粛な面持ちで、アルカディアス公爵の不正を奏上した。

「陛下。アルカディアス公爵は、科学の発展に貢献しようとする平民の研究を妨害し、その成果を横取りしようと企んでおります。さらに、自身の政敵であるフィリップ・アークライト卿に対して、 『魔法の病』 という卑劣な手段を用い、一家の安全を脅かしました。これらは、貴族としての義務に反する、言語道断の行為でございます!」

アードレ公爵は、フィリップ・アークライト卿の証言、ベイルからの報告書、そしてエメリアが 『魔法の病』 を治したという証拠を、国王に差し出した。

国王は、その書類に目を通し、顔色を変えた。国王は、科学技術の発展を支持しており、アルカディアス公爵の保守的な思想とは対立していた。そして、なによりも、貴族が私利私欲のために魔力を悪用したという事実は、国王の逆鱗に触れるものだった。

「……アルカディアス公爵に、直ちに王宮へ参るよう命じよ。そして、この件について、徹底的に調査を行う。もし、アードレ公爵の奏上が事実であった場合、厳正な処罰を下す」

国王の言葉は、王宮のホールに響き渡り、アルカディアス公爵の失脚を予感させた。

王都の権力を巡る、公爵たちの争いは、ついに国王の裁きを仰ぐ、大きな局面へと突入した。そして、その争いの発端となったのは、一人の平民の少女、エメリアの 『改造』スキル』 だった。