第117話.王宮での尋問と、公爵の窮地
アルカディアス公爵は、国王アルフレッドの前に引き立てられていた。威厳に満ちた玉座の間には、国王とアードレ公爵、そしてレナード伯爵が厳しい表情で控えていた。
「アルカディアス。アードレ公爵の奏上、そしてフィリップ・アークライト卿の証言について、何か弁明はあるか?」
国王の低い声が、玉座の間に響き渡った。
「陛下……! 私は、そのような不正など、一切行っておりません! アードレ公爵の奏上は、レナード伯爵と結託した、私を陥れるための謀略に違いありません!」
アルカディアス公爵は、必死に弁明した。彼は、ロッシュたちの研究を軽んじていたが、公の場で不正を働いたことまでは否定しようとした。
「謀略だと? では、フィリップ・アークライト卿の庭園で起きた**『魔法の病』**については、どう説明する? そして、その病を治したという、魔力を吸収する特別な砂は、どう説明するのだ?」
アードレ公爵が、鋭い口調で公爵を問い詰めた。
「それは……! そのような砂の存在など、私は聞いたこともありません!」
公爵は、もはや後がないことを悟り、**『特別な土』**の存在そのものを否定しようとした。しかし、その言葉は、彼自身の首を絞めることになった。
「では、公爵がロッシュたちの研究室から持ち去ったという、その土は一体何だったのだ? そして、魔道士セバスチャンが、その土を分析しようとしていたという報告は、どう説明する?」
レナード伯爵が、冷静かつ論理的に公爵を追い詰めた。
公爵は、言葉に詰まった。彼は、ロッシュたちの研究を横取りしようとしたこと、そして、その過程で魔力を悪用したことを、もはや否定することはできなかった。彼の顔は、絶望と屈辱で真っ青になっていた。
「もはや弁明の余地はないな。アルカディアス公爵。貴様の行為は、貴族の品位を汚し、王国の秩序を乱すものである。よって、公爵の位を剥奪し、領地を没収する。そして、この件に関わったオスカーとセバスチャンも、厳正に処罰する」
国王の裁定は、容赦のないものだった。
アルカディアス公爵は、その場に膝から崩れ落ちた。彼の野心は、一人の平民の少女の、小さな**『改造』スキル』**によって、完全に打ち砕かれたのだ。
この裁定は、王都の貴族社会に激震を走らせた。そして、エメリアたちの研究は、公爵の監視から解き放たれ、本来の目的である、王都の衛生環境の改善へと、新たな一歩を踏み出すことになった。