第119話.魔法を吸い込む砂と、エメリアの**『閃き』**

アルカディアス公爵の失脚後、王都は大きな転換期を迎えていた。レナード伯爵アードレ公爵は、エメリアが**『魔法の病』を浄化した『特別な砂』の存在を国王アルフレッド**に報告し、その技術の公的利用について協議を重ねていた。

ロッシュ先生ベイルは、エメリアから提供された**『特別な砂』**の解析を始めた。彼らは、その砂が魔力を吸い込むという驚くべき特性を持つことを確認した。

「この砂は、まさに奇跡だ! 公爵の魔道士ですら無力化した**『魔法の病』**を、完全に浄化できる……」

ベイルが、感動した様子で言った。

「しかし、どうやってこんな砂を……。エメリアさんは、この砂を道具屋で買ったと言っていたが……」

ロッシュ先生は、エメリアの**『閃き』**によって生み出されたこの砂の謎を、まだ解明できずにいた。

一方、エメリアは、その砂を増やすことはできないと知っていた。**『改造』スキル』は、物質の特性を書き換える力だが、物質そのものを創り出すことはできない。しかし、彼女は一つの『閃き』**を得ていた。

(砂は増やすことはできない。でも、たった一粒でも、その効果は無限だ……!)

エメリアは、ロッシュ先生たちに、砂を一粒ずつ小さなガラスケースに入れ、国中の貴族に配布することを提案した。

「一粒だけでも、魔力を吸い込む効果は変わりません。これを常備しておけば、**『魔法の病』**のような魔力災害から、人々を守ることができます」

エメリアの**『閃き』は、ロッシュ先生とベイル**を驚かせた。彼らはすぐにその提案を実行に移した。

国王アルフレッドは、エメリアの**『閃き』**と、その砂の持つ力に感銘を受け、王都の貴族たちにその砂を配布することを許可した。貴族たちは、魔力災害への備えとして、その砂をありがたがった。

「この砂があれば、もうアルカディアス公爵のような、魔力を悪用する者たちに怯える必要はない!」

貴族たちは、安堵と希望の表情で、砂を受け取った。

国中に砂を配布しても、エメリアが改造した砂はまだ大量に残っていた。ロッシュ先生ベイルは、その砂の特性をさらに深く研究し、より多くの人々の役に立つ方法を探し始める。

エメリアの**『閃き』と、彼女の生み出した『特別な砂』**は、王都の危機を救うだけでなく、この世界の科学と魔法の関係性を大きく変える、新たな時代の扉を開くことになった。