第121話.学業と、友との交流、そして再開された研究

アルカディアス公爵の失脚という激動の時代が過ぎ去り、王都の貴族社会は平穏を取り戻しつつあった。エメリアは、その喧騒から離れ、平穏な学園生活を送っていた。放課後、彼女はいつものように図書館で勉学に励んだり、リナマリアアルフレッドといった友人たちと、他愛もないおしゃべりを楽しんだりしていた。

そんなある日、エメリアはロッシュ先生から手紙を受け取った。

「エメリアさん、君のおかげで、私たちは公爵の監視から解放された。レナード伯爵様とアードレ公爵様のご尽力により、平民学校の一角に、広く清潔な新しい研究室が与えられた。これからは、誰にも邪魔されることなく、**『バクテリウム』**の研究に集中できる!」

手紙には、ロッシュ先生の喜びと、エメリアに対する深い感謝が溢れていた。しかし、エメリアは、直接研究室に来るようにという誘いには応じなかった。彼女は、まだ10歳の子供だ。今は、学業に専念し、友人たちとの交流を通じて、社会性を育むべき時だと考えていた。

(公爵様との戦いを通じて、私はたくさんのことを学んだ。でも、まだまだ知らないことばかりだ。この世界のこと、人々のこと……。もっと学ばないと)

エメリアは、ロッシュ先生に丁重な返事を書いた。

「先生、新しい研究室、おめでとうございます。私は、学業に専念するため、研究には直接参加できません。しかし、研究が壁に当たった時には、いつでもお声がけください。私の**『閃き』**が、お役に立てることを願っています」

エメリアの決意は固かった。彼女は、自分の能力が特別なものであり、それを公にすれば、再び公爵のような権力者の標的になることを恐れていた。だからこそ、彼女は、研究の最前線から一歩引いた立場で、**『閃き』**という形で協力することを選んだのだ。

ロッシュ先生ベイルは、エメリアの返事に、少しばかり寂しさを感じたものの、彼女の選択を尊重した。彼らは、エメリアの**『閃き』**という、研究に不可欠な力をいつでも頼れることを知っていたからだ。

こうして、エメリアは、学園生活と研究という二つの世界の間で、バランスを取りながら成長していくことになった。これは、彼女の新たな旅立ちを告げる、静かな始まりだった。