第125話.魔法改造と、初めての実験
**『魔法改造』のスキルを得てから数日後、エメリアは自室で、魔法の実験を試みていた。彼女は、魔法の授業で習った、最も基本的な魔法である『着火(イグニス)』の呪文をノートに書き写した。この呪文は、魔法陣を用いて発動させるのが一般的だったが、エメリアは、その呪文をそのまま使うつもりはなかった。彼女は、新たなスキル『魔法改造』を使い、呪文の構造式を『改造』**しようと試みたのだ。
(**『着火』**の呪文は、マナの流れを制御して、指先に熱エネルギーを集中させる。ならば、このマナの流れを、もっと効率的にすれば、より強力な炎を生み出せるはず……!)
エメリアは、ノートに書かれた呪文の構造式をじっと見つめた。彼女の**『改造』スキル』が発動し、複雑な幾何学模様と特殊な記号で構成された呪文が、まるで目の前にある物質のように、立体的に見えてきた。彼女は、マナの流れを司る部分の記号を、ほんのわずかに変更した。それは、前世の科学知識でいうところの、燃焼効率を高めるための、触媒の配置を調整するような感覚だった。この『改造』は、魔法陣という物理的な媒介を必要としない、彼女だけの『設計図』**だった。
「よし、これで……」
エメリアは、人差し指を立て、改造された呪文を心の中で唱えた。
「イグニス……!」
すると、彼女の指先から、以前よりもはるかに強く、そして鮮やかなオレンジ色の炎が、パッと灯った。炎は、彼女の意図に応じて大きさを変え、まるで彼女の意思を持っているかのように揺らめいた。その熱量は、通常の**『着火』**の比ではなかった。
「すごい……! 成功だわ!」
エメリアは、感動のあまり、声を上げた。彼女の**『魔法改造』は、ただ魔法の効果を強めるだけでなく、魔法の仕組みそのものを理解し、応用する力を彼女に与えてくれた。この力があれば、『バクテリウム』の研究を飛躍的に進めたり、『魔法の病』**のような魔力災害の根本的な解決策を見つけたりすることも、夢ではない。
エメリアは、指先に灯る炎をじっと見つめた。それは、彼女の内に秘められた、計り知れない可能性の光だった。彼女の知の探求は、新たな次元へと突入したのだ。