第129話.魔法陣の応用と、希望の光
エメリアからの手紙をきっかけに、魔法の仕組みの核心に迫ったロッシュ先生とベイルは、新たな探求に情熱を燃やしていた。彼らの研究室には、エメリアが**『魔法の病』を治した際に使った『特別な砂』**と、彼女が記した熱を吸収する魔法陣の構造式が並べられていた。
「この魔法陣の**『制御弁』**の理論を応用すれば、あの砂と同じ働きをする魔法陣を作り出せるかもしれない!」
ロッシュ先生が興奮した様子で言った。彼は、マナの流れを逆行させるだけでなく、特定のエネルギーを吸収、無力化させる魔法陣を構築しようとしていた。それは、魔法の力を悪用する者に対抗するための、画期的な技術だった。
「先生、それに……。エメリアさんが最初に持ち込んだ**『特別な砂』**は、バクテリウムの活動を信じられないほど活発にさせる特性も持っていました。もしかしたら、この二つの特性を、一つの魔法陣で再現できるかもしれません!」
ベイルの言葉に、ロッシュ先生の瞳がさらに輝いた。彼らは、エメリアの**『閃き』と、『特別な砂』が持つ本来の特性、そして魔力無効化という二つの側面を、魔法陣で融合させようとしていた。それは、病原体を浄化するバクテリウム**を活性化させつつ、魔力による災害から人々を守るという、まさに理想的な技術だった。
二人は、何日も寝食を忘れて、魔法陣の構築に没頭した。そして、ついにその魔法陣が完成した。それは、エメリアが**『改造』した砂と同じように魔力を吸収し、同時にバクテリウム**の活動を飛躍的に高める、二重の特性を持つ魔法陣だった。
「これで、もうアルカディアス公爵のような、魔力を悪用する者たちに怯える必要はない! そして、バクテリウムを大量に培養し、王都の衛生問題を根本から解決できる!」
ベイルが、感動のあまり、声を震わせた。
この魔法陣が完成すれば、その技術は王都の貴族や平民に広く普及させることができる。それは、一部の権力者や魔道士に独占されていた魔法の力を、科学の力で制御し、人々の生活を守るための道具へと変えることを意味していた。
二人は、この魔法陣を国王アルフレッドとアードレ公爵、そしてレナード伯爵に報告することを決めた。それは、魔法と科学が融合し、この世界のあり方を大きく変える、新たな時代の幕開けを告げる出来事だった。