第130話.魔法陣の完成と、エメリアの決意

エメリアがロッシュ先生に手紙を出してから、およそ3か月が経っていた。その間、エメリアは学業に励みながらも、『魔法改造』スキルを使って、既存の魔法を新しい魔法へと『改造』する作業に没頭していた。彼女のノートには、『着火(イグニス)』をさらに強力にする魔法陣から、熱を奪う『クィエトゥス』、さらには物質の性質を変えるような、何十種類もの新しい魔法陣がびっしりと書き込まれていた。

(この**『魔法改造』スキルは、本当にすごい。魔法の仕組みを論理的に理解できるから、まるでプログラムを書くみたいに、自由に魔法を『改造』**できる……)

エメリアは、自分の能力の可能性に、改めて驚きと喜びを感じていた。

そんなある日の放課後、エメリアは一通の手紙を受け取った。差出人はロッシュ先生だ。先生の受け持つ「生物学」の授業は1年で終わっており、今は授業で会うことがないため、二人の連絡手段は手紙だけだった。

手紙を広げると、そこには興奮した様子で綴られた文章が並んでいた。

「エメリアさん! やりました! 君の**『閃き』と、君が提供してくれた『特別な砂』**の力を応用して、バクテリウムを活性化させると同時に、魔力を吸収する魔法陣が完成しました!」

エメリアは、その手紙を読み、胸が熱くなった。

「この魔法陣を使えば、バクテリウムを大量に培養し、王都の衛生問題を根本から解決できます! そして、公爵のような、魔力を悪用する者たちに対抗するための、新たな希望となります!」

手紙の最後に、ロッシュ先生は、完成した魔法陣の構造式と、その原理を詳細に記してくれていた。それは、エメリアの**『魔法改造』の理論と、ロッシュ先生とベイル**が長年培ってきた科学の知識が融合した、まさに奇跡の結晶だった。

エメリアは、その魔法陣の構造式をじっと見つめた。そこには、彼女が**『着火』『改造』して『クィエトゥス』を生み出したのと同じ、マナの流れを制御する『制御弁』**の理論が応用されていた。

(先生たちが、私の**『閃き』**を、こんなにも素晴らしい形で現実のものにしてくれた……。これで、たくさんの人を救うことができる!)

エメリアは、嬉しさのあまり、涙がこぼれそうになった。彼女の**『閃き』**と、ロッシュ先生たちの努力が、ついに実を結んだのだ。

エメリアは、手紙を大切に胸に抱きながら、王都の未来が、少しずつ、確実に変わっていくのを感じていた。