第131話.魔法陣の報告と、エメリアの**『閃き』**
ロッシュ先生からの手紙を読んでから数日後、エメリアは新たな手紙を書いていた。手紙には、ロッシュ先生たちの研究の成功を心から祝福する言葉と、**『バクテリウム』をさらに効率的に活用するための、新たな『閃き』**が記されていた。
(魔法陣で**『バクテリウム』**を活性化させられるなら、その魔法陣を小型化して、王都の至る所に設置すれば……)
エメリアの脳裏に、王都の広大な地下水路に、小型の魔法陣が光を放つ光景が浮かび上がった。しかし、すぐに彼女は別の考えにたどり着いた。
(待って。魔法陣で**『バクテリウム』**そのものの機能を持たせられないだろうか? 魔法陣そのものが、バクテリウムのように汚染を浄化する……)
エメリアは、その**『閃き』を確信に変えるため、自室で『改造』スキル』を発動し、『バクテリウム』を『簡易鑑定』**してみた。バクテリウムの分子構造や、汚染物質を分解する働きが、まるで化学反応式のように彼女の頭の中に浮かび上がってくる。
(この働きを、魔法陣で再現すれば……!)
しかし、そこで、聞き慣れた声が彼女の思考を遮った。
「残念だが、君の**『簡易鑑定』では、そこまでの情報は得られない。バクテリウムの機能を魔法陣に書き込むには、その構造と働きを、より精密に分析する必要がある。それは、一朝一夕にできることではない。『精密鑑定』**のスキルが必要だろう」
その言葉に、エメリアはハッとした。彼女の持つ**『簡易鑑定』**スキルは、物質の基本的な構造や成分を把握することはできるが、その複雑な働きを完全に解明するほどの力はなかったのだ。
**『改造』スキル』のレベルをさらに上げ、『精密鑑定』**のスキルを獲得する必要がある。それは、新たな研究の道のりを示唆していた。
その頃、ロッシュ先生とベイルは、完成した魔法陣の設計図を手に、国王アルフレッド、レナード伯爵、そしてアードレ公爵の元を訪れていた。
「陛下。この魔法陣は、バクテリウムを活性化させ、王都の衛生問題を根本から解決する力を持っています。さらに、魔力を吸収する特性も持っており、魔力災害から人々を守るための防衛策にもなります」
ロッシュ先生は、興奮した様子で説明した。
国王アルフレッドは、その説明を聞き、目を見開いた。
「素晴らしい……! アルカディアスの件以来、魔力に対する不安が拭えなかったが、この魔法陣があれば、その不安も解消されるだろう」
レナード伯爵とアードレ公爵も、その魔法陣が持つ可能性に感銘を受けていた。彼らは、この魔法陣を王都に普及させるための予算と、研究をさらに進めるための支援を約束した。
「それにしても、この魔法陣のアイデアは、エメリア嬢の**『閃き』**から生まれたものだそうだな。彼女は、本当に驚くべき才能を持っている」
アードレ公爵が、感嘆の声を上げた。
ロッシュ先生は、誇らしげに頷いた。
「はい。彼女の**『閃き』**は、我々の常識をはるかに超えています。彼女がいなければ、この魔法陣は完成しなかったでしょう」
エメリアの**『閃き』**は、王都の未来を救い、科学と魔法が共存する新たな時代の扉を開いた。