第132話.エメリアの叙爵と、新たな道
ロッシュ先生たちの魔法陣が完成し、王都の未来に希望の光が灯ったことで、エメリアの功績は国王アルフレッドの耳にも届いた。エメリアがアルカディアス公爵の不正を暴き、国を魔力災害から守る技術の基礎を築いたことは、誰もが認めるところであった。
しかし、エメリアを叙爵することには、多くの反対意見が出た。彼女はまだ11歳の子供であり、貴族社会の常識や領地経営の知識を全く持っていないためだ。
そこで、アードレ公爵が自ら名乗り出た。
「陛下、エメリア嬢を私の養女としてお預かりしましょう。彼女には、平民学校から貴族学校へ転校させ、貴族としての教養や、領地経営の知識を学ばせます。そして、彼女が卒業した暁には、改めて叙爵してはいかがでしょうか」
アードレ公爵の提案は、反対派を黙らせるに十分なものだった。彼は、エメリアの才能が貴族社会で花開くことを信じていたのだ。
国王アルフレッドも、その提案を承認した。
「エメリア・エルヴァンス嬢を、アードレ公爵の養女とすること、そして、貴族学校卒業後に叙爵することをここに決定する」
この決定は、エメリアの両親や家族にも伝えられた。突然のことに、彼らは戸惑いを隠せなかったが、娘が国の未来を担うという名誉と、叙爵後も家族と共に領地で暮らせるという条件に、最終的には同意した。
「エメリア……。お前は、本当にすごい子だ。まさか、こんなことになるとは……」
エメリアの父親は、嬉しさ半分、寂しさ半分といった複雑な表情で言った。
エメリアは、自分の人生が、公爵との戦いを通じて大きく変わってしまったことを実感していた。しかし、彼女の心には、恐怖や不安はなかった。彼女は、ロッシュ先生やアルベルト、そしてアードレ公爵という、大切な人々との出会いを通じて、自分の能力を、ただ隠すのではなく、誰かのために使うべきだと知ったのだ。
「私、頑張るわ。そして、いつかみんなと一緒に、この国をもっと住みやすい場所にしてみせる!」
エメリアは、新たな決意を胸に、貴族学校へと向かうことになった。それは、彼女の知の探求が、個人の研究から、国の未来を担う大きな役割へと変わる、新たな旅立ちだった。