第133話.平民学校との別れと、約束
アードレ公爵の養女となることが決まり、エメリアは平民学校を去ることになった。そのことを知ったクラスメイトたちは、驚きと、そして寂しさを隠せないでいた。
放課後、いつものように図書館で、アルフレッドやセシルがエメリアを待っていた。彼らの表情は、どこか沈んでいた。
「エメリアさん……。本当に、貴族学校に行っちゃうんだね」
アルフレッドが、寂しそうに言った。
「ええ。でも、これで皆と会えなくなるわけじゃないわ。貴族学校と平民学校の交流会は、これからも続くんだから」
エメリアは、そう言って微笑んだ。しかし、彼女の心の中にも、大切な友人たちと離れてしまうことへの寂しさがあった。
「そうだよ、アルフレッド! エメリアは、きっとまた交流会で会ってくれるさ!」
セシルが、力強く言った。彼の言葉に、エメリアは胸が熱くなった。
「ありがとう、みんな。私は、貴族学校でたくさんのことを学んでくるわ。そして、いつか、みんなと一緒に、この国をもっと良くするために、私の力を使うわ!」
エメリアは、友人たちに力強くそう言った。それは、彼女の心からの決意だった。
平民学校の校門を出ると、エメリアを待っていたのは、アルベルトだった。彼は、貴族学校の制服を着て、少し緊張した面持ちで彼女に話しかけた。
「エメリアさん。君が貴族学校に来ることを知って、驚いたよ。これで、これからは毎日会えるんだね」
アルベルトの言葉に、エメリアはホッと胸をなでおろした。
「ええ、そうね。アードレ公爵様には、本当に感謝しているわ」
「僕も、君の秘密を守ることに変わりはない。そして、貴族学校で会っても、僕たちの友情も変わらない」
アルベルトが、優しい声で言った。彼は、エメリアの**『閃き』と、『魔法の病』を治した『特別な砂』**の秘密を知っている。だからこそ、彼女のことが心配だった。
「ありがとう、アルベルト君。貴族学校で、アードレ公爵様の下で学べることは、私にとって、とても光栄なことよ。きっと、貴族社会のことも、領地経営のことも、たくさん学べると思うわ」
エメリアは、そう言って微笑んだ。彼女の瞳には、不安の色はなかった。むしろ、新たな世界への希望に満ちていた。
「エメリアさん。僕も、君に負けないくらい、立派な科学者になる。だから、貴族学校で会った時には、胸を張って、僕の研究の成果を話せるようにしておくよ!」
「ええ、楽しみにしているわ!」
二人は、笑顔で固く約束を交わした。それは、平民学校との別れであると同時に、互いの成長を誓い合う、希望に満ちた約束だった。