第135話.貴族学校での新生活

翌朝、エメリアはアードレ公爵邸から馬車に乗り込み、貴族学校へと向かった。窓の外を流れる王都の景色は、平民学校に通っていた頃とはまた違って見えた。公爵邸という温かい場所で新生活を始めたばかりのエメリアの心には、期待と、わずかな緊張感が入り混じっていた。

貴族学校の校門をくぐると、その荘厳な雰囲気に圧倒された。平民学校とは比べ物にならないほど立派な校舎は、彼女の知的好奇心をくすぐる。校舎の中には、交流会で何度か顔を合わせた貴族の生徒たちが、談笑しながら歩いていた。エメリアにとって、全く知らない世界というわけではない。見知った顔が多いことは、彼女にとって大きな安心材料だった。

「こちらが、今日から皆さんと一緒に学ぶ、エメリア・アードレさんです」

担任教師に促され、エメリアは新しい教室の前に立った。教室の扉が開き、中に入ると、生徒たちの視線が一斉に彼女に注がれる。少し緊張しながらも、彼女は深呼吸をして、自己紹介を始めた。

エメリア・アードレと申します。今日から皆さんと一緒に学べることを、とても楽しみにしています。どうぞ、よろしくお願いいたします」

自己紹介を終えると、教室の後ろの席から、聞き慣れた声が聞こえてきた。

「エメリアさん! こっちだ!」

声の主は、アルベルトだった。彼は、エメリアに微笑みかけ、隣の空いている席を指さした。彼の隣には、交流会で親しくなった貴族の友人たちも座っている。エメリアは、その優しさに心から安堵し、笑顔で席についた。

(よし、ここが私の新しい学び舎。ここで、たくさんのことを学んで、ロッシュ先生たちやみんなの役に立つんだ!)

エメリアは、自分にそう言い聞かせた。貴族学校の図書館にも強い興味があった。きっと、平民学校にはなかった、魔法や歴史、そして貴族社会の仕組みに関する貴重な文献がたくさんあるはずだ。

彼女の知の探求は、新たな場所で、新たな仲間と共に、再スタートを切った。