第137話.貴族学校での魔法の授業と、その力
貴族学校での授業は、平民学校とは大きく異なっていた。特に魔法の授業は、その違いが顕著だった。平民学校では、魔法の歴史や原理を学ぶ座学が中心だったが、貴族学校では、実践的な内容がカリキュラムの大部分を占めていた。
「皆が国を守る貴族となるため、攻撃魔法を習得することは、何よりも重要である」
教師の言葉の通り、授業は攻撃魔法の練習から始まった。生徒たちは一人ずつ前に出て、魔法で的を攻撃していく。火の玉を放つ者、氷の矢を放つ者、水の刃を操る者など、生徒たちの魔法は多種多様だった。エメリアは、その様子をじっと見つめていた。
「次、エメリア・アードレ」
エメリアの番が来た。彼女は教卓の前に立ち、教室の反対側にある的を見つめた。アルベルトをはじめとする、交流会で親しくなった同級生たちが、温かい眼差しで彼女を見守っている。しかし、中には、平民から貴族になったエメリアを蔑む声も聞こえてきた。
「平民が使う魔法なんて、たかが知れているだろう」 「どうせ、まともな魔法も使えないくせに……」
そんな陰口が聞こえてくる中、エメリアは静かに目を閉じた。彼女は、授業で習った、最も基本的な攻撃魔法である**『火球(ファイアボール)』を心の中で唱えようとした。しかし、その瞬間、彼女の脳裏に、『魔法改造』**のスキルが発動した。
(**『火球』**は、ただの熱エネルギーの塊。もっと、燃焼効率を高めて、さらに強力な炎を生み出せるはず……!)
エメリアは、**『火球』の呪文の構造式を、自分なりに『改造』**した。それは、熱と空気の流れを最適化し、爆発的な威力を生み出すための、前世の科学知識を応用したものだった。
そして、彼女は静かに目を開け、心の中で改造された呪文を唱えた。
「ファイアボール……!」
その瞬間、エメリアの手のひらから、通常の**『火球』**とは比べ物にならない、灼熱の炎の塊が放たれた。炎は、轟音を立てながら的へと向かい、的を木っ端微塵に砕き散らした。教室にいた生徒たちは、そのあまりの威力に、言葉を失った。
平民を蔑んでいた生徒たちは、驚愕の表情でエメリアを見つめていた。アルベルトは、彼女の力を知っていたが、改めてその圧倒的な力に感銘を受けていた。
エメリアは、何事もなかったかのように、静かに教卓へと戻った。彼女の力は、貴族学校の生徒たちの常識を、根底から覆したのだ。