第138話.驚愕と、新たな評価

エメリアが放った灼熱の**『火球』**は、的を砕き、教室の空気を一瞬で変えた。生徒たちは、驚愕の表情でエメリアを見つめていた。先ほどまで陰口を叩いていた生徒たちは、言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くしていた。

(あ、やりすぎちゃったかな……)

エメリアは、自分の力の制御がまだ完璧ではないことに気づき、内心で反省した。彼女は、周囲の視線に少し気まずさを感じながらも、静かに席に戻った。

「素晴らしい……! まったくもって素晴らしい!」

教師は、エメリアの魔法の威力に感嘆し、興奮した様子で言った。

「通常の**『火球』**とは比べ物にならない威力だ! まるで、上級魔道士が放つ魔法のようだ……!」

教師の言葉に、教室の生徒たちはさらに驚いた。彼らが使う魔法は、あくまでも基礎的なもの。上級魔道士の領域に達する魔法を、同級生が使ったことに、信じられないという気持ちと、畏敬の念が混じり合っていた。

授業が終わると、エメリアの周りには、多くの生徒が集まってきた。

「エメリアさん、今の魔法は一体……!」 「君は、本当に平民なのか!?」

生徒たちの質問攻めに、エメリアは戸惑いながらも、なんとか笑顔で答えた。

「たまたま、ロッシュ先生から、魔法の効率を高める**『閃き』**を教えてもらっただけよ」

エメリアは、**『魔法改造』のスキルについては伏せ、ロッシュ先生の『閃き』**のおかげだと答えた。彼女にとって、この力は、誰にも知られてはいけない、秘密の力だった。

そんな中、アルベルトがエメリアのそばに駆け寄ってきた。

「エメリアさん、大丈夫だった?」

彼は、エメリアの周りを囲む生徒たちを、静かに制しながら言った。

「ええ、ありがとう、アルベルト君」

エメリアは、アルベルトの優しさに心から感謝した。彼は、彼女の秘密を知る、数少ない友人だった。

この日を境に、エメリアに対する生徒たちの評価は、一変した。平民出身であることを蔑む者はなくなり、彼女の才能を尊敬する者が増えていった。エメリアは、自分の力を、貴族学校という新たな舞台で、少しずつ認めさせていったのだ。