第143話.噂の広がりと、新たな出会い
エメリアが**『制御魔法陣』**を生み出したという噂は、瞬く間に貴族学校中に広まっていった。彼女のクラスの生徒たちは、以前にも増して強力な魔法を、安全に使いこなせるようになっていた。その噂を聞きつけた他のクラスの生徒たちが、放課後になるとエメリアの周りに集まり、魔法の制御を学びたいと懇願するようになった。
「エメリア様! ぜひ、私にも魔法の制御の仕方を教えてください!」 「お願いします! 私も、自分の力を自由に操ってみたいんです!」
エメリアは、そうした生徒たちに、一人ひとり丁寧に**『制御魔法陣』の原理を説明していった。彼女は、『改造』スキル』を隠しながらも、前世の知識とロッシュ先生**から学んだ科学を駆使し、誰にでも分かりやすい言葉で魔法の仕組みを語った。
そんなある日、エメリアはアルベルトと共に、いつものように図書館で研究をしていると、一人の少女に声をかけられた。
「あの……あなたが、エメリア・アードレさん?」
彼女は、銀色の髪と、透き通るような青い瞳を持つ、可憐な少女だった。その容姿は、まるで絵画から抜け出してきたかのようだった。
「はい、そうですが……。何か、ご用でしょうか?」
エメリアが尋ねると、少女は少し緊張した面持ちで答えた。
「私は、エラ・フォン・ライヒェンバッハと申します。アークライト家の分家の者です。あなたの**『制御魔法陣』**の噂を聞いて、ぜひお会いしたいと思っていました」
エラは、そう言ってアルベルトに視線を向けた。
「アルベルトお兄様から、エメリアさんのことを聞いていました。あなたの**『閃き』**は、本当に素晴らしいって」
アルベルトは、少し照れくさそうに頷いた。
「エラは、僕の遠縁にあたるんだ。実は、彼女も魔法の才能に恵まれているんだが、その力が強すぎて、制御できずに悩んでいたんだ」
エラは、俯き加減に言った。
「私の魔法は、すぐに暴走してしまうんです。だから、周りの人たちを傷つけてしまうのが怖くて、なかなか魔法を使えなくて……」
その言葉に、エメリアは心を痛めた。かつてルイスが感じていた恐怖と同じものだった。
「大丈夫よ、エラさん。その気持ち、私にはよく分かるわ」
エメリアは、エラの手を優しく握った。
「もしよかったら、私の**『制御魔法陣』**の原理を教えてあげましょうか? きっと、あなたの力になれると思うから」
エラは、エメリアの優しい眼差しに、希望の光を見出した。彼女の瞳には、魔法への恐怖ではなく、再び魔法を使えるようになるかもしれないという、確かな期待が宿っていた。