第146話.アルベルトの言葉と、エメリアの決意

エメリアは、自分の力をめぐる葛藤から、どこか憂鬱な日々を送っていた。その変化に気づいたアルベルトは、放課後、彼女を貴族学校の中庭へと誘った。

「エメリアさん。最近、元気がないように見えるけど、何かあったのかい?」

アルベルトは、中庭のベンチに座り、優しくエメリアに語りかけた。

「ええ……。私の**『閃き』**が、また誰かを傷つけるんじゃないか、って考えてしまって……」

エメリアは、先日図書館でアルベルトに話した不安を、もう一度口にした。

「私の力がなければ、ロッシュ先生たちの研究は進まなかったかもしれない。でも、私の力がなければ、公爵様との戦いも、あんなにひどいことにはならなかったかもしれないわ……」

エメリアは、自分の力が、争いの原因になってしまうのではないかと、心の中でずっと悩んでいた。

「それは違うよ、エメリアさん」

アルベルトは、静かに首を横に振った。

「君の力は、たくさんの人を救う力だ。アルカディアス公爵の不正を暴き、王都を魔力災害から守ってくれた。**『魔法の病』**を治す方法を見つけてくれた。そして、僕たちのクラスの生徒たちに、魔法を安全に使う方法を教えてくれた。君がこの国にもたらした希望は、誰もが認めている」

彼の言葉は、エメリアの心に温かく響いた。

「君の力は、誰かを傷つけるためのものじゃない。誰かを守るための力だ。それに、君は一人じゃない。僕たちがいる。ロッシュ先生や、アードレ公爵様も、君のそばにいる。君が一人でその重荷を背負う必要はないんだ」

アルベルトは、そう言って、エメリアの隣に座り、彼女の肩をそっと抱いた。

エメリアは、アルベルトの優しい言葉と温かさに、胸が熱くなった。彼女は、自分の力が持つ可能性と、それに伴う責任の重さに押しつぶされそうになっていたが、アルベルトの言葉が、彼女に再び前を向く勇気を与えてくれた。

「ありがとう、アルベルト君……。私、自分の力を信じるわ。そして、この国を、もっと住みやすい場所にしてみせる!」

エメリアの瞳には、強い決意が宿っていた。彼女は、アルベルトと共に、自分の力を、誰かを守るための力に変えることを、心に誓った。