第150話.新たな領主として、故郷の村へ
叙爵の儀を終えたエメリアは、故郷の村へと戻ってきた。村人たちは、子爵となった彼女の帰還を、盛大な歓迎で迎えた。
「エメリア様、ようこそお帰りなさいませ！」 「おめでとうございます、エメリア子爵様！」
村人たちの歓声に、エメリアは胸がいっぱいになった。彼女は、王都で身につけた貴族の礼儀作法で、一人ひとりに丁寧に挨拶を返した。
故郷の家には、ロッシュ先生とベイル、そしてアルベルトの姿はなかった。彼らはそれぞれの場所で、エメリアの活躍を心から祝福してくれていた。
その代わり、エメリアの隣には一人の男性が立っていた。彼の名はガイウス。アードレ公爵の片腕として、領地経営に長年携わってきた人物だ。公爵は、エメリアの補佐として、彼を任命したのだ。
「エメリア子爵様、この度は誠におめでとうございます。私はガイウスと申します。公爵様のご命令により、領地経営の補佐を務めさせていただきます」
ガイウスは、深々と頭を下げた。彼は、エメリアの年齢を気にすることなく、一人の領主として敬意を払ってくれた。
「ガイウスさん、どうぞよろしくお願いいたします。私の故郷を、もっと住みやすい場所にしたいのです」
エメリアは、そう言って力強く微笑んだ。
ガイウスは、早速、領地を巡ることを提案した。村を歩きながら、エメリアは、公爵邸でのロッシュ先生やベイルとの研究成果である、バクテリウム活性化と魔力吸収の魔法陣の設置場所を説明した。そして、領民たちには、魔法を安全に使うための**『制御魔法陣』**を教えた。
「エメリア様のおかげで、この村も、いつか王都のように豊かな村になるのですね」
一人の村人が、感動のあまり、目に涙を浮かべながら言った。
「もちろんです。この村を、この国のどこよりも住みやすい場所にしてみせます！」
エメリアの瞳には、強い決意が宿っていた。彼女は、故郷の村で、家族、そして新しい補佐であるガイウスと共に、新たな領主としての一歩を踏み出した。彼女の知の探求は、個人の研究から、領地、そして国の未来を担う、大きな役割へと変わっていった。