第155話.魔法の壁と、豊かな大地
街づくりが始まってから一年が過ぎ、エメリアの故郷の村は、見違えるほどに変わっていた。新しい街は、広大な農場も含むように、魔法陣が施された頑丈な外壁で囲まれていた。その外壁は、木材とは思えないほどの硬度と耐久性を持ち、かつてアルカディアス公爵が開発しようとした幻の鉱物、ミーア鉱よりも頑丈なものとなっていた。
「エメリア子爵様!見てください!この外壁の頑丈さ!もう、ちょっとやそっとの攻撃じゃ、びくともしませんぜ!」
鍛冶屋ダクレスが、誇らしげに外壁を拳で叩いた。鈍い音が響き、その硬さを物語っている。エメリアは、ダクレスが作った魔法陣を刻み込むための専用の道具と、ゼノスが設計した外壁の構造を組み合わせ、この魔法の壁を作り上げた。
「ダクレスさん、ありがとう。この壁があるおかげで、みんな安心して暮らせるわ」
エメリアは、そう言って微笑んだ。
ディランは、外壁の上から街の様子を眺めていた。彼は、この魔法の壁が、この街の防衛において、どれほど大きな意味を持つかを理解していた。
「この壁があれば、敵の侵入を許すことはないでしょう。あとは、私が率いる騎士団が、万が一の事態に備えるのみです」
ディランの言葉に、ガイウスが頷いた。
「これで、街の安全は保障されましたな。あとは、街の内政を安定させるだけです」
ガイウスは、順調に進む街づくりに満足していた。
外壁に守られた広大な農場では、すでに多くの作物が栽培されていた。作物は、エメリアがロッシュ先生の研究から得た**『閃き』**を応用し、バクテリウムを活性化させた土壌で育てられていた。その結果、作物は驚くほど大きく、甘く、栄養価が高くなっていた。
「エメリア様!見てください!こんなに大きな作物が、この村で育つなんて!」
農民の一人が、巨大なカブを抱えながら、興奮した様子でエメリアに報告した。
「すごいわね! これなら、みんなお腹いっぱい食べられるわ!」
エメリアは、農民たちの喜ぶ顔を見て、心から嬉しくなった。彼女の**『閃き』は、人々の生活を豊かにし、この街を、『食の都』**へと変えていっていた。
新しい街は、ただの村から、希望に満ちた、豊かな街へと生まれ変わろうとしていた。エメリアは、この街の領主として、そして科学者として、その未来を、しっかりと見据えていた。