第158話.**『洞察(インサイト)』**が導く解決策
エメリアは、新たに得たスキル**『洞察(インサイト)』で、街に潜む問題の本質を見抜いた。彼女は、ガイウスとディラン**、そして街づくりの中心を担う鍛冶屋ダクレスを前に、解決策を語り始めた。
「街のいざこざの多くは、職にあぶれた若者たちが、お金に困って起こしているものです。彼らを罰するだけでは、根本的な解決にはなりません。彼らが安心して働ける場所を作ることが、一番の解決策です」
エメリアの言葉に、ガイウスは驚きを隠せないでいた。彼は、問題の表面しか見ていなかった。
「しかし、エメリア子爵様……。街の建設には多くの人手が必要です。ですが、若者たちの中には、手に職のない者も多い。彼らをただ雇い入れただけでは、作業の妨げになってしまうかもしれません」
ガイウスが、現実的な問題を指摘した。
その時、職人たちの中心として会議に参加していた鍛冶屋ダクレスが口を開いた。
「エメリア様!それなら、俺たちの出番です!俺たち職人が、若者たちに技術を教えます!仕事のやり方から、道具の使い方まで、全部教えてやりますぜ!せっかくこの街で、俺たちの腕をふるうんだ。後進を育てるのも、俺たちの役目だと思っていましたから!」
ダクレスの力強い言葉に、エメリアは微笑んだ。彼の協力があれば、職にあぶれた若者たちを、街づくりの貴重な戦力に変えることができる。
「ガイウスさん、ダクレスさんが言ってくれたように、職人さんたちに若者たちの指導をお願いしましょう。そして、ディランさん、**『治安維持隊』**の隊員は、若者たちの中から、やる気のある者たちを選抜してはどうでしょうか?」
エメリアの提案に、ディランは目を見開いた。
「若者たちを、**『治安維持隊』**に……? しかし、彼らは訓練を受けていない素人です」
「はい。ですが、彼ら自身が街の秩序を守る立場になれば、街に対する愛着が湧くはずです。それに、ディランさんが直接指導すれば、彼らはきっと立派な隊員になります」
エメリアは、ディランの統率力と、彼の持つ騎士としての誇りを信じていた。
「わかりました、エメリア子爵様。このディラン、あなたの期待に応えてみせましょう」
ディランは、そう言って力強く頷いた。
エメリアの**『洞察(インサイト)』**は、街のいざこざの原因を突き止めるだけでなく、そこに隠された、新たな可能性を見出していた。それは、街の発展と共に、人々の心をも豊かにする、希望に満ちた解決策だった。