第159話:若者たちの新たな道
エメリアは、街のいざこざの原因となっていた、職にあぶれた若者たちを集めることにした。最初は、見慣れない子爵の呼びかけに、反発する者も少なくなかった。
「どうせ、俺たちみたいな不良は、厄介払いされるだけだろう」 「どうせ、まともな仕事なんてないんだろ!」
そんな不満の声が飛び交う中、エメリアは一人ひとりの言葉に耳を傾け、丁寧に説明した。
「私たちは、あなたたちを罰するために集めたのではありません。この街を、あなたたちの力で、もっと良い場所にしたいのです。どうか、私たちの話を聞いてください」
エメリアの真剣な眼差しと、誠実な言葉に、若者たちは徐々に心を動かされていった。そして、全員が広場に集まった。
全員を前に、エメリアは新たな街づくりの計画と、若者たちに期待する役割を語った。
「あなたたちには、この街の未来を担う、重要な役割を任せたいのです。体力に自信がある者は、街づくりに参加し、職人さんたちから技術を学んでほしい。そして、勇気と正義感のある者は、ディランさんが率いる**『治安維持隊』**の一員として、この街を守ってほしい」
話が終わると、エメリアは若者たち一人ひとりと面接を始めた。彼女は、**『洞察(インサイト)』**のスキルを使い、彼らの本質を見抜いていった。
面接の最中、エメリアは一人の若者に心を留めた。彼の名はレオン。彼は、口数は少ないが、その瞳の奥には、鋭い観察眼と、物事を冷静に分析する才能が秘められていた。
エメリアは、レオンに問いかけた。
「あなたは、街づくりと**『治安維持隊』**、どちらに興味がありますか?」
「どちらでも……。ただ、俺は、街の役に立ちたいだけです」
その言葉に、エメリアは確信した。
「あなたは、内政に向いているわ。街を動かすには、お金の流れや、人々の生活を管理する才能も必要です。ガイウスさんの補佐として、彼の元で学んでみませんか?」
レオンは、その突拍子もない提案に驚きながらも、静かに頷いた。
「このレオン、エメリア子爵様のご期待に応えてみせます」
全員の面接が終わった後、エメリアは充実感に満たされていた。彼女は、**『洞察(インサイト)』**を使って彼らの本質を見抜き、一人ひとりの言葉に耳を傾け、それぞれの心に寄り添うことで、彼らから信頼を得ることができた。
職にあぶれていた若者たちは、ダクレス率いる職人たちのもとで、街づくりの新たな担い手となり、ディランが率いる**『治安維持隊』の一員として、街の治安を守る存在となった。そして、レオンはガイウス**の元で、内政の知識を学び始めた。
若者たちの瞳には、もはや不満や諦めの色はなかった。そこにあったのは、新たな道を見つけたことへの希望と、この街の未来を自分たちの手で切り開くという、確かな決意だった。