第164話.覚醒した力と、偽りの記憶

エメリアは、目の前で倒れたエリックの姿に、激しい怒りを覚えた。彼女の心の中で、眠っていた力が覚醒する。それは、新たなスキル**『生命創成(ライフクリエイト)』**だった。

「貴様……!その瞳はなんだ!?」

バルドは、エメリアの瞳に宿った、神聖な光に怯んだ。彼の目に映るエメリアは、もはやただの少女ではなかった。彼女の体からは、無限とも思えるほどの魔力が溢れ出し、空間を震わせている。

「エリックさんを……必ず助けてみせる!」

エメリアは、そう叫ぶと、エリックの元へと駆け寄った。彼女は、**『真理解明(トゥルース)』**のスキルを使い、彼の体の状態を詳細に解析した。粉砕された骨、破裂した血管、そして失われた命の光……。通常であれば、治療は不可能な状態だった。

しかし、エメリアには、新たなスキル**『生命創成(ライフクリエイト)』**があった。

『生命創成(ライフクリエイト)』!」

エメリアは、そう唱え、エリックの体に掌をかざした。すると、彼女の掌から放たれた光が、エリックの体を包み込んだ。粉砕された骨が再構築され、破裂した血管が再生していく。失われた命の光が、再び彼の体に戻っていく。

「そんな馬鹿な……!ありえない! 生命を操る魔法だと!?」

バルドは、その光景を目の当たりにし、恐怖に震え上がった。彼の知る魔法の常識を、エメリアは軽々と超えていた。このままでは、彼女の能力が王都中に知れ渡ってしまう。

(いけない……!この能力は、まだ知られてはいけない!)

エメリアは、バルドを倒す前に、彼の記憶を**『改造』**することを決意した。

『究極改造(アルティメット)』!」

エメリアは、そう唱え、バルドの意識に直接働きかけた。彼女の魔力が、バルドの脳内に流れ込み、彼が目撃した光景の記憶を改ざんしていく。

「おのれ……!こんなところで、私が……!」

バルドは、身動きが取れなくなり、絶望の表情を浮かべた。しかし、その瞳に宿っていた狂気と憎しみは、徐々に薄れていった。

エメリアは、バルドを倒すことはせず、彼の意識を**『改造』**し、彼が目撃したことを「ただの幻覚だった」と認識させた。そして、バルドを拘束し、その場に放置した。

その頃、意識を回復したエリックが、ゆっくりと目を開けた。

「子爵様……?私は……」

エリックは、自分の無傷の体に驚き、そして、目の前に立つエメリアを見つめた。

「エリックさん、大丈夫ですか!?早く、ここから脱出しましょう!」

エメリアは、そう言ってエリックを助け起こした。彼女は、王都の危機は去り、平和が戻ったことを知っていた。

王都を救ったエメリアの功績は、再び王都中に広まった。しかし、彼女の心の中には、彼女の内に秘められた、計り知れない力への戸惑いが残っていた。彼女は、エリックと共に、地下水路を後にした。