第165話.凱旋と、新たな脅威の始まり

王都の危機が去り、エメリアとエリックは、研究所に戻った。そこでは、ロッシュ先生ベイルが、彼女の帰還を涙を流しながら喜んだ。

「エメリア、君が……王都を救ってくれたんだね……」

ロッシュ先生は、そう言って、エメリアの頭を優しく撫でた。

「先生……!無事でよかった……」

エメリアは、ロッシュ先生の無事な姿に、心から安堵した。

王都の騎士団は、地下水路に倒れていたバルドを発見し、身柄を拘束した。しかし、彼の記憶は曖昧で、自分がなぜ地下水路にいたのか、そして何をしたのか、全く覚えていなかった。

「この男の記憶は、何者かによって改ざんされた可能性があります」

ディランは、エメリアの元に戻り、バルドの状況を報告した。

「ですが、彼の体に刻まれた貴族派の紋章から、彼が今回の魔力災害の首謀者の一人であることは間違いありません。子爵様が地下水路で何を目撃されたのか、もしよろしければ……」

ディランは、エメリアに尋ねた。エメリアは、自分の能力が知られることを避け、バルドの記憶を改ざんしたことを誰にも話さないことに決めていた。

「いえ、私も、はっきりとは……。魔力災害が収束した時には、彼は既に倒れていました」

エメリアは、そう言って言葉を濁した。ディランは、彼女の言葉を信じ、それ以上は追及しなかった。

王都の危機を救ったエメリアの功績は、再び王都中に広まった。彼女は、王都を離れる前に、国王アルフレッドに謁見し、今回の事件の経緯と、ロッシュ先生の研究の重要性を説いた。

「エメリア子爵。君のおかげで、王都は救われた。バクテリウムの研究は、この国の未来を担う重要な研究だ。私も、全面的に支援することを約束しよう」

国王アルフレッドは、エメリアの功績を称え、彼女の街づくりと研究に、惜しみない支援をすることを約束した。

エメリアは、**『青の騎士団』**と共に、故郷の街へと凱旋した。街の人々は、彼女を英雄として迎え、盛大な祝賀会を開いた。

しかし、エメリアの心の中には、新たな脅威の影がつきまとっていた。

バルドは、記憶を改ざんされたとはいえ、貴族派の人間……。彼が暴走した魔法陣を作ったのなら、貴族派は、まだ暗躍しているはず。そして、私の**『閃き』**を危険視している……)

エメリアは、故郷の街を、そして大切な人々を守るため、更なる高みへと上ることを決意した。彼女の戦いは、まだ始まったばかりだった。