第174話.ロッシュ先生の決意と、技術の融合
エメリアの都市では、クルダン帝国に対抗するための準備が、急ピッチで進められていた。堀の拡張や魔法の壁の強化、そして都市全体を覆う巨大な**『防御魔法陣』**の構築が、ゼノスの指揮のもとで着々と進められていく。
一方、ロッシュ先生の研究室では、エメリアが考案した新たな魔力供給システムの実現に向けて、二人の研究が始まっていた。
「エメリア、君の構想は素晴らしい。バクテリウムの力を最大限に引き出し、魔力を安定して供給する……。だが、これを実現するには、バクテリウムを活性化させる魔法陣を、さらに複雑にする必要がある。一歩間違えれば、王都の時のような大惨事を引き起こしかねない」
ロッシュ先生は、そう言って、エメリアに現実的なリスクを語った。彼の表情は、真剣そのものだった。
「わかっています、先生。だからこそ、先生の知識と、私の魔法陣の技術を合わせる必要があるんです。先生のバクテリウムの知識は、この世界で誰にも真似できないものですから」
エメリアは、そう言って、ロッシュ先生の協力を求めた。
「ふむ……。君の言う通りだ。私の研究は、君という稀有な才能があって、初めて完成するのかもしれない」
ロッシュ先生は、そう言って、深く頷いた。彼の瞳には、研究者としての好奇心と、エメリアへの信頼が宿っていた。
二人は、連日連夜、研究室にこもり、魔法陣の設計図を完成させた。それは、バクテリウムの活動を、かつてないほど精密に制御し、莫大な魔力エネルギーを安定して供給する、画期的なシステムだった。
「エメリア、君は本当に、私の想像を遥かに超えている。この魔法陣は、もはや私だけの技術ではない。君と私の、二人の才能が融合した、新たな技術だ」
ロッシュ先生は、そう言って、完成した設計図をエメリアに見せた。
その頃、ルークとガイウスは、クルダン帝国との経済戦争を有利に進めるため、新たな流通ルートの構築を始めていた。彼らは、王国の辺境にいる商人たちと接触し、エメリアの都市が生産する高品質な商品を、クルダン帝国の平民向けに密かに流通させる計画を着々と進めていた。
「この計画が成功すれば、クルダン帝国の貴族たちは、我々の商品の安さと質の高さに、市場を奪われることになります。そうなれば、彼らの権力基盤は、大きく揺らぐでしょう」
ガイウスは、そう言って、ルークに報告した。
「ええ。僕たちは、武力ではなく、経済と知恵で、クルダン帝国に勝つんだ!」
ルークは、そう言って、力強く頷いた。
エメリアの都市は、今、物理的、経済的、そして魔法的な側面から、クルダン帝国の脅威に立ち向かうための準備を整えつつあった。エメリアの**『閃き』と、ロッシュ先生の知識、そしてルーク**の才能が融合し、街は、希望に満ちた未来へと突き進んでいた。