第185話.ルディウスの真意と、エメリアの警戒
エメリアの元に届いたルークからの情報――クルダン帝国の若き将軍ルディウスが、貴族学校に留学していたという事実は、エメリアの警戒心を一層強めた。彼は、単なる将軍ではない。エメリアの都市を攻略するために、武力以外の方法を探る、新たな刺客だった。
「ルディウス……。彼は、この街の**『核』**を探している……」
エメリアは、そう言って、静かに呟いた。
「『核』、ですか?エメリア様」
ガイウスが、首をかしげた。
「ええ。この街は、私の**『閃き』によって作られた、魔法と科学技術が融合した都市です。彼の目的は、この街の防御の隙を探ることではありません。この街の根幹にある、私の『閃き』**や、それを支える技術の秘密を探ることです。もし、その秘密が彼に知られてしまえば……」
エメリアの言葉に、一同は顔を曇らせた。彼らは、エメリアの技術が、この街の繁栄を支えていることを知っていた。
「では、我々が警戒すべきは、武力ではなく、ルディウス将軍のような、情報収集を目的とした者たちだと……」
ディランが、そう言って、厳しい表情を浮かべた。
「その通りです。彼らは、スパイを送り込んできているでしょう。ですが、我々には、街の入り口にある魔法陣があります。彼は、正面からスパイを送り込むような愚かな真似はしないでしょう」
エメリアは、そう言って、ルークに視線を向けた。
「ルーク、ルディウスは、貴族学校で何をしていたの?僕たちの街の発展に、異常なほど関心を持っていたと言っていたけれど」
「うん。彼は、僕が話す街の技術や仕組みを、とても熱心に聞いていたよ。特に、水道や電気、そして、魔法陣の応用技術について、深く掘り下げて質問してきたんだ。最初は、ただの好奇心だと思っていたけど、今思えば、あれは、この街の技術体系を理解しようとしていたんだと思う」
ルークの言葉に、エメリアは背筋が凍るのを感じた。ルディウスは、街の技術を理解することで、その弱点を探ろうとしていたのだ。
「なるほど……。彼の目的は、この街の技術を模倣することではなく、この街の技術を、別の角度から無力化することかもしれません。例えば、バクテリウムを制御する魔法陣の弱点を見つけ、そこを突くとか……」
エメリアの言葉に、ガイウスは驚きの声を上げた。
「エメリア様。では、我々は、ルディウス将軍が、この街に忍び込むことを警戒するだけでなく、彼が、遠隔からこの街の技術を破壊しようとすることにも、備えなければならないのですね」
「ええ。ルディウスは、決して油断できない相手です。私たちは、彼の次の手を読み、先手を打つ必要があります」
エメリアは、そう言って、新たな魔法陣の構想を練り始めた。それは、街の技術を、外部からの干渉から守るための、防御魔法陣だった。
エメリアの戦いは、武力と武力ではない、知恵と知恵の戦いへと、その様相をさらに複雑に変化させていく。彼女の都市は、今、物理的な防御だけでなく、技術的な防御も強化し、来るべき戦いに備え始めていた。