第188話.遠隔解析の深化と、王都の貴族派との共謀

エメリアは、ルークから受け取った「ルディウス将軍が王国の貴族たちに書状を送っている」という情報をもとに、再び**『遠隔解析(リモートスキャン)』を始動させた。彼女の意識は、クルダン帝国の帝都から、王国へと向かうルディウス**将軍の書状を追った。

ルディウス将軍……。貴方は、武力ではなく、政治的な謀略で、私を追い詰めようとしている……。その書状には、一体何が書かれているの?)

エメリアは、そう呟き、精神を集中させた。彼女の視界に、貴族たちが集まる王都の邸宅が浮かび上がった。そして、その邸宅の一室で、貴族派の代表たちが、ルディウス将軍からの書状を読んでいる様子を捉えた。

「これは……!まさか、クルダン帝国の将軍が、我々と同じ考えを持っているとは……!」

書状を読んだ貴族の一人が、驚きの声を上げた。

「エメリア伯爵を、王国の貴族社会から孤立させ、その権威を失墜させる……。そのためには、彼女の都市の技術が、いかに王国の秩序を乱す危険なものか、人々に知らしめる必要がある、と……」

別の貴族が、書状の内容を読み上げた。

(やはり……!彼は、武力ではなく、私を政治的に葬ろうとしている……。そして、そのために、王都の貴族派と手を組んだのね……!)

エメリアは、ルディウス将軍の真意を理解し、背筋が凍るのを感じた。

「しかし、彼は、一体どうやって、我々に協力を求めてきたのだ?クルダン帝国と王国の貴族では、利害関係が異なるはず……」

一人の貴族が、疑問を口にした。

「いや、書状には、こう書かれている。『エメリアの都市の技術を、我々が独占すれば、王国と帝国、両国の貴族の権威は、揺るぎないものとなる』と。彼は、我々に、エメリアの技術を独占する**『甘い餌』**を提示してきたのだ」

貴族たちの間で、笑い声が上がった。彼らの目には、すでにエメリアの都市の技術が、自分たちのものになったかのように見えていた。

その時、エメリアは、ルディウス将軍の書状の、隅に記された小さな文言に気づいた。

『エメリアの技術は、バクテリウムという、不安定な存在によって成り立っている。この不安定さを利用すれば、彼女の都市の技術は、いとも簡単に崩壊するだろう』

エメリアは、その一文を読んだ瞬間、顔が青ざめるのを感じた。

(彼は、バクテリウムのことを、どこまで知っているの……?私の**『閃き』**の秘密に、近づいている……!)

エメリアは、**『遠隔解析(リモートスキャン)』**を解除し、自室のベッドに倒れ込んだ。彼女の心は、ルディウス将軍という、知略に長けた敵の存在に、恐怖を感じていた。

「お姉ちゃん、大丈夫!?」

その時、ノックと共に、ルークが部屋に入ってきた。

「大丈夫よ、ルーク……。ただ、少し、疲れただけ……」

エメリアは、そう言って、無理に微笑んだ。

ルディウス将軍……。貴方との知恵比べは、私が想像していたよりも、遥かに危険なものになりそうだわ)

エメリアは、そう呟き、静かに反撃の策を練り始めた。彼女の戦いは、武力と武力ではない、知恵と知恵の戦いへと、その様相をさらに複雑に変化させていく。