第190話:公爵の真意と、新たな同盟の始まり
エメリアは、目の前に座るグランツ公爵の言葉に、驚きを隠せずにいた。彼が、エメリアの**『閃き』**と、その力が生み出す未来を、王国の希望と見なしているとは、想像もしていなかったからだ。
「グランツ公爵様……。私が、貴族が持つ古い常識を覆す存在だということを、貴方様は、危険だとお考えにならないのですか?」
エメリアは、そう言って、公爵の真意を尋ねた。
公爵は、静かに首を横に振った。
「いいえ。私は、むしろその革新こそが、この王国に今、最も必要なものだと考えています。貴族たちは、自身の権益を守ることに固執し、国の発展を妨げている。その結果、クルダン帝国のような新興勢力に、後れを取ろうとしているのです」
公爵の言葉は、エメリアの心を打った。彼は、単なる権力者ではなく、王国の未来を真剣に憂う、真の政治家だった。
「ですが、公爵様。私の力は、アードレ公爵様のおかげで、ようやく日の目を見ることができました。グランツ家のような名門が、私のような者に手を差し伸べることには、貴族派からの反発も大きいでしょう」
エメリアは、そう言って、アードレ公爵への感謝と、グランツ公爵の立場を気遣った。
公爵は、穏やかな笑みを浮かべた。
「アードレ公爵殿には、頭が下がる思いです。彼が君を見出したことが、この王国の未来を切り開いた。そして、君の言う通り、貴族派からの反発は大きいでしょう。だが、それは織り込み済みだ。国王陛下も、君の存在が、停滞した貴族社会に、新たな風を吹き込むと期待しておられる」
公爵の言葉に、エメリアは、国王アルフレッドの深い思惑と、グランツ公爵の強い意志を感じ取った。
「では、公爵様は、私に何を望まれるのですか?」
エメリアがそう尋ねると、公爵は真剣な表情で答えた。
「エメリア伯爵。私は、君の**『閃き』と技術を、王国の発展のために使ってほしい。そして、クルダン帝国のルディウス**将軍が仕掛ける、政治的な謀略から、この王国を守ってほしい」
公爵の言葉に、エメリアは深く頷いた。彼女の目的は、最初からこの街を守ることだった。しかし、今、その目的は、王国全体を守るという、より大きなものへと変わろうとしていた。
「わかりました、グランツ公爵様。私にできることなら、何でも協力させていただきます」
エメリアは、そう言って、公爵に手を差し出した。二人の間には、王国の未来をかけた、新たな同盟が結ばれた。
公爵は、その手を力強く握り返し、エメリアに微笑みかけた。
「ありがとう、エメリア伯爵。君が、この王国の未来を、明るく照らしてくれると信じている」
エメリアは、公爵の言葉に、新たな使命感を感じていた。彼女の戦いは、もはや一地方都市の領主の戦いではない。王国の未来をかけた、壮大な戦いへと、その様相を変化させていく。