第191話.ルディウスの再動と、エメリアの密かなる備え

グランツ公爵との同盟を結び、新たな使命感を胸に抱いたエメリアは、クルダン帝国の動向を警戒し続けていた。彼女の**『遠隔解析(リモートスキャン)』**は、ルディウス将軍の動きを捉え続けていた。

「やはり……。ルディウス将軍は、王都の貴族派と共謀し、私を政治的に孤立させようとしている……。ですが、それだけではないようですね」

エメリアは、執務室でガイウスディランルークを前に、**『遠隔解析(リモートスキャン)』**で得た情報を語った。

「彼が、王国の貴族たちに送った書状には、私たちの街の技術の危険性だけでなく、新たな軍事作戦の計画も記されていました。前回の敗北を教訓に、今度は3方向から、私たちの都市を攻撃するつもりです」

エメリアの言葉に、ディランは眉をひそめた。

「3方向からの攻撃……。確かに、前回の正面からの攻撃では、**『防御魔法陣』**に阻まれました。今度は、手薄な側面や背面を狙ってくるつもりか……」

「ええ。その通りです。ですが、彼らは、私たちの街の防御が、すでに360度対応していることを知らないでしょう。それに……」

エメリアは、そう言って、不敵な笑みを浮かべた。

「彼らは、前回の敗北から、私たちのクロスボウの存在を恐れています。だから、クロスボウの射程外から、魔道士団の魔法攻撃で、街を壊滅させようと計画しています」

ガイウスは、その言葉に、驚きの表情を浮かべた。

「ですが、伯爵様。それでは、前回の二の舞ではありませんか?彼らは、私たちの**『防御魔法陣』**を過小評価しているのでしょうか?」

「いいえ。彼らは、私たちの**『防御魔法陣』**の存在は知っています。しかし、その魔法陣が、どのような仕組みで動いているのか、理解できていません。彼らは、前回の魔法の消滅を、偶然か、もしくは特殊な魔法具の力だと考えているようです。だから、今度は、3方向から、飽和攻撃を仕掛けて、魔法陣を突破するつもりです」

エメリアの言葉に、一同は、ルディウス将軍の巧妙な作戦に、感心と同時に警戒を強めた。

「ですが、ご心配なく。彼らが考えていることは、すでに**『遠隔解析(リモートスキャン)』**で把握済みです。彼らの作戦を逆手に取り、新たな迎撃作戦を練りましょう」

エメリアは、そう言って、一枚の地図を広げた。そこには、ルディウス将軍が計画した3方向からの攻撃ルートと、彼女が考えた迎撃作戦が、詳細に描かれていた。

「まず、彼らが魔道士団の魔法攻撃を仕掛けてくるであろう、3つの地点に、**『魔法無効化(マジックキャンセル)』**の魔法陣を仕掛けます。この魔法陣は、敵の魔道士団が放った魔法を無効化するだけでなく、魔道士自身の魔力回路を破壊する効果があります。彼らは、魔法を使おうとすればするほど、自分自身を傷つけることになるでしょう」

エメリアは、そう言って、冷徹な笑みを浮かべた。彼女の瞳には、勝利への確信が宿っていた。

ルディウス将軍は、前回の敗北を教訓に、より巧妙な作戦を立ててきた。だが、エメリアは、その作戦をすべて見抜いていた。彼女の戦いは、もはや、相手の戦術を読み、それを逆手に取る、高度な情報戦へと、その様相を変化させていく。