芹沢鴨の異世界日記 第八話
酒場を出て、俺とアルベルトはそれぞれの宿へと向かうべく、夜道を歩いていた。俺の頭の中は、先ほどのアルベルトの話で一杯だった。
「家族を失った……か」
ポツリと呟くと、アルベルトが横から俺の顔を覗き込む。
「なんだ、俺の話がそんなに面白かったか?」
「いや。ただ、少し、考えさせられただけだ」
アルベルトの話は、俺の過去と重なる部分があった。新撰組局長として、俺は京の街の治安を守っていた。俺の剣は、家族を失う人間を、少しでも減らすために振るっていたつもりだった。
だが、結果として、俺は多くの人間を斬り、そして、俺自身も家族と呼べる人間はいなかった。
「なぁ、アルベルト。お前は、なぜ剣を振るう?」
俺の問いに、アルベルトは少し考えてから答えた。
「俺は、剣を振るう理由なんて、最初はなかった。ただ、魔物が憎い、それだけだった。でもな、芹沢。お前と出会って、少し考えが変わった」
「……どういうことだ?」
「お前の剣は、俺の剣とは違う。俺の剣は、ただの復讐だ。だが、お前の剣は、もっと、何か、違うものだ」
アルベルトの言葉は、俺の胸に突き刺さった。
俺の剣は、何だというのだ?
俺自身、まだその答えを見つけられていない。
「……ふん。馬鹿げたことを言うな」
俺は、そう言ってアルベルトに背を向けた。
「おい、芹沢! 待てよ!」
アルベルトの声を無視し、俺は宿への道を急いだ。
宿に戻ると、俺はすぐに床に就いた。だが、眠れない。
アルベルトの言葉が、頭から離れなかった。
『お前の剣は、もっと、何か、違うものだ』
俺の剣は、何だ?
再び、俺の頭の中に、声が響いた。
《スキル……スキル……》
それは、『スキル作成』の力だ。
俺は、目を閉じ、集中した。
俺の持つ剣は、この世界の武器だ。日本の刀とは違う。だが、この剣にも、俺の『北辰一刀流』の技を乗せることができる。
ならば、この剣と、俺の剣術を、融合させることはできないだろうか?
俺が、そう考えていると、頭の中で声が響いた。
《スキル作成……『剣術融合』を作成しますか?》
「剣術融合……?」
俺は、その言葉に、胸がざわめいた。
それは、まさに、俺が求めていた力だった。
俺の剣術と、この世界の武器の特性を、融合させる。
その力があれば、俺は、この世界で、最強の剣士になれるかもしれない。
「……作成しろ」
俺は、そう念じた。
《スキル作成:『剣術融合』、完了。》
スキル: 剣術融合(レベル1) 効果: 剣術の技と、使用する剣の特性を融合させ、新たな技を生み出す。
新たなスキルが、俺の心臓に刻み込まれた。
俺は、すぐに起き上がり、腰の剣を抜き放った。
そして、俺は、目を閉じ、集中した。
俺の剣術と、この剣を、融合させる。
俺が、そう念じた瞬間、俺の剣が、まるで俺の身体の一部になったかのように、軽くなった。そして、剣の重み、バランス、全ての感覚が、俺の身体に、完璧に馴染んだ。
「……これだ」
俺は、確信した。
これで、俺は、もう迷うことはない。
俺は、この剣と、このスキルで、この世界の理不尽に、立ち向かう。
そして、俺の剣が、何であるのかを、この世界で、見つけ出してやる。
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