芹沢鴨の異世界日記 第二十一話


絶壁山脈の山頂は、吹き荒れる風と立ち込める霧に包まれていた。足元の断崖絶壁の下には、どこまでも続く雲海が広がっている。俺は、その雲海の上を旋回するグリフォンの姿を、じっと見つめていた。

「……行くぞ、アルベルト」

俺がそう言うと、アルベルトは緊張した表情で俺に尋ねた。

「おい、芹沢。どうやって、あの空を飛ぶ魔物を倒すんだ? 俺たちの剣も、魔法も、届かないぞ」

その言葉はもっともだった。グリフォンは、俺たちの攻撃が届かない、遥か上空を飛んでいる。

だが、俺は、この戦いに負けるつもりはなかった。

「ふん。届かなければ、届くようにすればいい」

俺は、そう言って、胸の中で、あるスキルを想像していた。

それは、俺の剣術に、新たな可能性を与えてくれる、ただ一つのスキル。

『スキル作成』。

「スキル作成……『飛翔』を作成しますか?」

俺は、そう念じた。

《警告。スキルレベルが不足しています。》

やはり、ダメか……!

俺は、舌打ちをした。

だが、俺は諦めなかった。

「代替案を提示しますか?」

《代替案を提示します。》

《スキル作成:『飛翔』を簡易化したものとして、『跳躍』を作成します。》

「……跳躍」

俺は、その言葉に、胸が高鳴るのを感じた。

「よし。作成しろ」

《スキル作成:『跳躍』、完了。》


スキル: 跳躍(レベル1) 効果: 身体能力を一時的に向上させ、通常では到達できない高みまで跳躍することができる。

俺は、新たなスキルを、心臓に刻み込んだ。

そして、俺は、アルベルトに、ある指示を出した。

「アルベルト。お前の魔法で、奴を引きつけろ」

「え、俺の魔法で? そんなの、届くわけないだろ!」

「いや、届く。俺の剣が届くように、お前の魔法も届くようにしてやる」

俺は、そう言って、アルベルトに背を向けた。

アルベルトは、まだ困惑した表情を浮かべていたが、俺の言葉を信じてくれたようだった。

アルベルトは、魔力を練り上げ、上空のグリフォンに向かって、小さな火の玉を放った。

火の玉は、グリフォンの遥か手前で、力尽きて消えていく。

「くそっ、やっぱり、届かない……!」

アルベルトが、悔しそうに叫んだ。

だが、俺は、その言葉を待っていた。

「今だ……!」

俺は、地面を力強く蹴った。

「『跳躍』!」

俺の身体は、まるで矢のように、上空へと飛び上がった。

だが、グリフォンは、まだ、俺の手の届かない場所にいる。

俺は、空中で、再び地面を蹴るかのように、身体を捻った。

「『跳躍』……二の段!」

俺の身体は、さらに上空へと加速した。

俺は、グリフォンの目の前に、たどり着いた。

グリフォンは、俺の突然の出現に、驚いたようだった。

「……ふん。馬鹿な顔だ」

俺は、そう言って、剣を構えた。

グリフォンの翼から、風の刃が、俺に向かって放たれた。

「『剣術融合』……流刀!」

俺は、その風の刃を、剣でいなし、その勢いを、自分の力に変える。

そして、俺は、グリフォンの首を狙って、剣を振り抜いた。

「居合……抜刀斬り!」

俺の剣は、光を放ち、グリフォンの首を、正確に捉えた。

ゴォン!

巨大な悲鳴が、山脈全体に響き渡る。

グリフォンの首は、斬り落とされ、その身体は、雲海の中へと落ちていった。

俺は、地上へと落下していく。

だが、俺の顔には、勝利の笑みが浮かんでいた。