芹沢鴨の異世界日記 第二十二話
グリフォンを討伐した俺は、身体が重力に引かれて、絶壁の下へと落ちていく。だが、俺の顔には、勝利の笑みが浮かんでいた。
「ふん。まあ、なんとかなるだろう」
俺は、そう呟くと、再び、頭の中で『スキル作成』の力を念じた。
《スキル作成……『着地』を作成しますか?》
「……作成しろ」
《代替案を提示します。》
《スキル作成:『着地』を簡易化したものとして、『衝撃吸収』を作成します。》
「よし。作成しろ」
《スキル作成:『衝撃吸収』、完了。》
スキル: 衝撃吸収(レベル1) 効果: 着地時の衝撃を緩和し、ダメージを軽減する。
俺は、新たなスキルを、心臓に刻み込んだ。
そして、俺は、絶壁山脈の中腹にある、アルベルトが待つ場所へと向かって、落下していく。
着地の瞬間、俺の身体から、薄い光が放たれた。地面に衝突した衝撃は、まるでクッションの上に落ちたかのように、柔らかく吸収された。
「……うおっ! 芹沢! 無事か!」
アルベルトが、俺の姿を見て、駆け寄ってきた。
「ふん。この程度で、どうにかなるか」
俺は、そう言って、立ち上がった。
だが、俺の顔は、血の気が引いていた。
『跳躍』と『衝撃吸収』。この二つのスキルを、短時間で二つも作成したことで、俺のMPは、ほぼ空になっていた。そして、身体には、激しい疲労感が押し寄せてくる。
「おい、芹沢! 顔色が悪いぞ! 無理をするな!」
アルベルトは、俺の異変に気づき、心配そうな顔で俺を見た。
「……大丈夫だ。それよりも、グリフォンの羽を、回収しなければならない」
俺は、そう言って、雲海の下へと落ちていった、グリフォンの身体が落ちた場所を指差した。
「え、あんなところ、どうやって……?」
アルベルトが、困惑した顔で俺を見た。
だが、その時。
雲海の中から、巨大な鷲の魔物たちが、次々と現れた。
「くそっ、グリフォンの縄張りか……!」
アルベルトが、焦りの声を上げる。
鷲の魔物たちは、グリフォンの死体に群がっている。そして、俺たちを、まるで餌を狙うかのように、獰猛な眼差しで見つめていた。
「……なるほど。厄介だな」
俺は、そう呟いた。
俺のMPは、もうない。スキルは、使えない。
このままでは、鷲の魔物たちの餌食になってしまう。
だが、俺は、諦めなかった。
「アルベルト。お前の魔法で、奴らを引きつけろ」
「え? でも、お前のスキルが……」
「いいからやれ! 俺には、まだ、剣がある!」
俺は、そう言って、剣を構えた。
アルベルトは、俺の言葉を信じて、魔法を放った。
「『フレイムボルト』!」
火の玉が、鷲の魔物たちに向かって放たれる。
鷲の魔物たちは、その火の玉を避けながら、俺たちに向かって、急降下してきた。
俺は、迫りくる鷲の魔物たちに、剣を振るった。
俺の剣術は、スキルがなくても、十分に通用する。
北辰一刀流の免許皆伝。その腕前は、この世界のどんな魔物にも、引けを取らない。
一匹、また一匹と、鷲の魔物たちが、俺の剣によって斬り伏せられていく。
だが、鷲の魔物たちは、数が多すぎる。そして、空を飛び、上空から攻撃してくる。
「くそっ、キリがない……!」
俺は、そう言って、舌打ちをした。
その時、一匹の鷲の魔物が、俺の背後から、鋭い爪で襲いかかってきた。
「っ……!」
俺は、その一撃を、身体を捻ってかわしたが、肩に熱い痛みが走った。
「芹沢!」
アルベルトが、悲鳴のような声で俺の名を呼んだ。
俺は、肩から血を流しながらも、剣を構え直した。
だが、俺の視界は、鷲の魔物たちに囲まれ、絶体絶命の状況に陥っていた。
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