芹沢鴨の異世界日記 第二十四話
背中に生えた翼は、まるで俺の身体の一部であるかのように、俺の意志に完璧に従った。俺は、空を自由に舞い、上空から襲いかかってくる鷲の魔物たちを、冷静に見据えた。
「行くぞ……!」
俺は、そう叫ぶと、剣を構えた。
「『空翔剣』……円月斬り!」
俺は、円を描くように、鷲の魔物たちを斬りつけた。
ギィィィン!
俺の剣は、風を纏い、まるで巨大な鎌のように、鷲の魔物たちの身体を切り裂いていく。
鷲の魔物たちは、悲鳴を上げる間もなく、次々と空から落ちていった。
俺は、空を舞いながら、まるで剣舞を踊っているかのように、華麗に鷲の魔物たちを斬り伏せていく。
『空翔剣』の力は、俺の想像を遥かに超えていた。
地上では、敵の攻撃をかわしながら、一撃を叩き込むのが精一杯だった。だが、この空では、俺は、敵の攻撃をかわすだけでなく、自分から、圧倒的な攻撃を仕掛けることができる。
そして、俺は、鷲の魔物たちを全て倒し終えると、絶壁山脈の中腹にいるアルベルトの元へと降り立った。
「おい、芹沢! お前、本当に人間か……?」
アルベルトは、俺の姿を見て、震える声でそう言った。
俺の背中には、まだ、光を放つ翼が生えている。
「ふん。そう思うなら、それで構わん」
俺は、そう言って、翼を消滅させた。
「……信じられない。お前、グリフォンの羽で、空を飛ぶ力を手に入れたのか?」
アルベルトは、呆然とした表情で俺に尋ねてきた。
「ああ。どうやら、俺の『スキル作成』は、材料となる魔物の特性を、俺のスキルとして取り込むことができるようだな」
俺は、そう言って、地面に落ちているグリフォンの羽を拾い上げた。
このグリフォンの羽は、もう、俺の身体の一部ではない。それは、俺のスキルへと変化したのだ。
「すげえ……。お前、本当に、どこまで強くなるんだ……?」
アルベルトは、俺の言葉に、嬉しそうな笑顔を見せた。
「さあな。だが、まだ、満足はしていない」
俺は、そう言って、アルベルトに、グリフォンの羽を差し出した。
「おい、これを持って、王都に帰るぞ。そして、賢者の塔へ行く」
「おう!」
俺たちは、グリフォンの羽を手に、絶壁山脈を後にした。
帰り道は、登りよりも遥かに楽だった。もう、俺たちを襲ってくる魔物はいない。
俺たちは、たわいもない話をしながら、王都への道を歩いていった。
「なあ、芹沢。お前の『スキル作成』は、なんでもできるのか?」
アルベルトが、不思議そうな顔で俺に尋ねてきた。
「さあな。だが、俺が求める力なら、作り出すことはできるだろう」
「すげえ……。お前、本当に、この世界の歴史を変えるかもしれないぜ」
アルベルトの言葉に、俺は少しだけ、胸が高鳴るのを感じた。
歴史を変える、か。
新撰組局長だった頃、俺は、歴史の表舞台に立つことはなかった。いや、歴史の闇に葬られた、と言う方が正しいだろう。
だが、この世界では、俺は、俺自身の力で、歴史を作ることができるのかもしれない。
俺は、アルベルトと共に、王都へと向かった。
そして、俺の新たな物語が、今、始まろうとしていた。
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